TPプレスリリース(研究)リスト
九大発表(2012年4月20日)
白血球の炎症反応をブロックできるDOCK2タンパク質阻害剤
阪大発表(2012年3月27日)
フィブロネクチン受容体α5β1インテグリンの結晶構造
京大発表(2012年2月20日)
脂肪センサーGPR120は食事性肥満の原因遺伝子
理研‐九大共同発表(2012年2月14日)
免疫系細胞が刺激に応答し動く仕組み
京大発表(2012年1月30日)
抗体を用いて創薬標的膜たんぱく質の構造解析に成功
東大発表(2012年1月23日)
光が当たるとイオンを通すメカニズムを明らかに
東大発表(2012年1月17日)
植物の免疫メカニズムを担う膜交通分子の発見
北大発表(2012年1月5日)
がん・自己免疫疾患に関わるタンパク質Cbl-bの構造
北大発表(2012年1月5日)
オートファジーの活性化に関わるタンパク質群の構造
名大発表(2011年11月21日)
陸上植物の進化過程におけるジベレリン受容システムの誕生
千葉大発表(2011年11月15日)
タンパク質ナノモーターの回転軸の詳細構造
理研発表(2011年10月14日)
遺伝子の「使用禁止マーク」を外す仕組み
理研発表(2011年10月12日)
腫瘍抑制因子APCタンパク質複合体の構造
プロテインエクスプレス発表(2011年10月7日)
抗原に結合すると光る抗体の作製
京大発表(2011年10月6日)
高脂血症治療薬のターゲットタンパク質胆汁酸輸送体の構造
奈良先端大発表(2011年9月30日)
「花成ホルモンフロリゲンはジャガイモではイモを作らせる」
千葉大発表(2011年8月2日)
「V型ATPaseの阻害機構の解明に成功」
奈良先端大発表(2011年8月1日)
「花成ホルモンフロリゲンの受容体の同定と作用機構の解明」
阪大発表(2011年7月15日)
「死に行く宿主細胞から放出されたDNAがアルミニウムアジュバントの効果を担う」
理研発表(2011年6月29日)
「調製困難な膜タンパク質の1 つ「ARII」の結晶構造を決定」
理研発表(2011年6月24日)
「プロファイリングで、抗がん剤候補物質の作用機序を解明」
JST−京大−九大共同発表(2011年6月23日)
「花粉症・アレルギーの発症因子の立体構造を世界で初めて解明」
東京大学発表(2011年6月13日)
「植物はいかに細胞内の物質輸送ルートを新規開拓したのか」
東京大学、京都産業大学、京都大学共同発表(2011年5月12日)
「イオンを利用して細胞の外に蛋白質を運ぶメカニズムを初めて解明」
筑波大学発表(2011年4月11日)
「再発した前立腺癌の増殖を制御する新たな分子メカニズムの発見」
大阪大学発表(2011年3月31日)
「慢性皮膚炎・免疫異常に関わるシグナル伝達機構の解明」
理研発表(2011年2月25日)
「膜タンパク質の性状を簡便かつ迅速に解析できる手法の開発に成功」
大阪大学発表(2011年1月26日)
「細菌べん毛タンパク質輸送装置とF型ATP合成酵素との意外な類似性」
東京大学発表(2011年1月17日)
「がん転移の原因タンパク質の構造解明」
東京大学‐理研共同発表(2010年12月2日)
「細菌の遺伝子発現を阻害する新たな仕組みの発見」
大阪大学発表(2010年9月30日)
「セマフォリンとその受容体プレキシンの複合体の立体構造を解明」
理研‐東京大学共同発表(2010年9月30日)
「tRNAにわざと誤ったアミノ酸を付加して修正する巧妙な仕組みを解明」
理研‐東京大学共同発表(2010年8月23日)
「核酸のように振る舞うタンパク質を明らかに」
理研発表(2010年8月16日)
「タンパク質機能の謎を解く新たなカギは小分子化合物」
理研‐東京大学共同発表(2010年8月13日)
「生物に必須な元素「セレン」をタンパク質に正しく取り込む仕組みを解明」
東京大学発表(2010年8月2日)
「芳香族化合物のニトロソ化を触媒する酵素」
東京大学発表(2010年7月1日)
「メスマウスの交尾受け入れ性行動を促進するオスフェロモンの発見」
大阪大学発表(2010年5月28日)
「リンパ球移動のナビゲーション機構の発見−最新のイメージング技術を用いた可視化によって免疫難病治療薬・がん治療薬開発のための新しい作用点が見つかる」
奈良先端科学技術大学院大学発表(2010年5月11日)
「最強の病原菌防御メカニズムを担うタンパク質の機能を世界で初めて発見」
大阪大学発表(2010年4月26日)
「細菌のべん毛の数を巧みにコントロールするしくみを解明」
JST、京都大学共同発表(2010年4月23日)
「細胞膜たんぱく質が物質を細胞内へ運ぶ仕組みを分子レベルで解明」
兵庫県立大学発表(2010年4月13日)
「生きるためのエネルギーを取り出すチトクロム酸化酵素(呼吸酵素)の仕組みの解明」
大阪大学発表(2010年4月4日)
「インフルエンザワクチンの作用メカニズムを解明」
東京大学発表(2010年3月31日)
「アディポネクチンが筋肉内で運動と同様の効果をもたらす可能性を発見−アディポネクチンの1 型受容体の活性化薬が、メタボリックシンドロームや糖尿病の治療薬となることが期待」
奈良先端大発表(2010年3月12日)
「病原菌に対抗する植物の免疫受容体形成の仕組みを世界で初めて解明−食糧増産やバイオ燃料の開発に役立つ病気に強い植物の育成に期待」
JST‐東京都医学研究機構‐東北大学共同発表 (2010年2月22日)
「細胞内にたんぱく質が異常蓄積することで酸化ストレスからの防御システムが活性化される仕組みを解明−がん細胞が獲得した生存戦略の解明にも迫る成果」
東北大発表 (2010年1月19日)
「生体の酸化ストレスセンサーの形を解明−生体防御機構の理解から生活習慣病の予防と治療へ」
分子科学研究所発表 (2010年1月18日)
「細胞の中の不要なタンパク質に目印をつける仕組みを解明」
理化学研究所発表 (2009年11月27日)
「世界初・タンパク質の微小結晶を照らす夢の光が誕生−タンパク質結晶構造解析専用ビームラインで世界初の1マイクロメートルのビームを実現」
東京大学発表 (2009年10月23日)
「植物が乾燥ストレスホルモン「アブシジン酸」に反応する仕組みを解明−分子構造に基づく合理的なストレス耐性付与技術の開発に期待」
東京大学発表 (2009年10月22日)
「tRNAリシジン合成酵素が正確な翻訳を行う機構の構造基盤」
奈良先端大発表 (2009年9月25日)
「日本や中国、韓国などアジアの稲作環境ではたらくイネ第二の花咲かホルモンを世界で初めて発見−イネは栽培環境に合わせて、花咲かホルモン使い分けの仕組みを持っていた」
理化学研究所発表 (2009年9月16日)
「無細胞タンパク質合成系を活用した膜タンパク質合成方法の開発に成功−合成が難しい膜タンパク質を、正しい形と機能を保持した活性体として大量合成」
理化学研究所‐東京大学共同発表 (2009年9月14日)
「遺伝情報を正しく読み解くための新規な制御機構を解明−転移RNAの正しい立体構造を保障する酵素が存在」
(財)東京都医学研究機構発表 (2009年5月15日)
「細胞内の"たんぱく質分解装置"が形成される仕組みを解明−新たなたんぱく質を標的とした抗がん剤開発につながる発見」
(財)東京都医学研究機構発表 (2009年5月1日)
「細胞内で「ユビキチン」の量がコントロールされる仕組みを解明−神経変性疾患やがんに関連するたんぱく質の制御メカニズムの発見」
JST・九大発表 (2009年3月27日)
「白血球の一種「好中球」が感染源に向けて動く際の基本原理を解明−炎症性疾患の治療応用に期待」
高エネ研発表 (2009年3月20日)
「らせんタンパクに目印タンパクが結合するしくみを初めて解明 - NEMOタンパク質とポリユビキチン鎖の構造解析に成功」
東京大学発表 (2009年3月13日)
「珍しい構造を持つトリパノソーマの呼吸酵素:薬剤標的にも」
理研発表 (2009年3月11日)
「タンパク質の立体構造の解明を加速する新規技術の開発に成功- 大腸菌でヨード原子を含む人工アミノ酸をタンパク質に組み込むシステムを開発」
奈良先端大発表 (2009年2月24日)
「世界初!イネ品種の収穫時期を調節するメカニズムを解明〜花咲かホルモンの量が関係 品質向上、増産に期待〜イネの進化の解明に手がかり」
東大発表 (2009年2月23日)
「大腸菌全タンパク質の凝集解析によってタンパク質の知られざる性質を解明」
筑波大発表 (2009年2月9日)
「乳がんの増殖と転移を抑制する鍵タンパク質を発見 −乳がんをはじめとするがん転移抑制への新規治療法に道」
JST, 東大発表 (2009年1月1日)
「ピロリジルtRNA合成における翻訳の直交性の分子構造基盤」
名大、京大、理研共同発表 (2008年11月27日)
「ジベレリン受容体の構造が明らかに - 植物の自在な生長調節を可能にする「第2の緑の革命」の起爆剤」
東大発表 (2008年10月16日)
「タンパク質を膜透過させる装置の構造変化の解明」
理研−東大共同発表 (2008年8月19日)
「タンパク質に人工アミノ酸を組み込む融合酵素の開発に初めて成功
アミノ酸を正しく識別する「校正」機能を持つチロシルtRNA合成酵素を開発 -」
横浜市立大発表(2008年7月22日)
「かゆみ抑制物質:横浜市立大の研究グループが発見 アトピー治療薬に期待」
JST−理研−京大共同発表 (2008年6月17日)
「イオン輸送性ATPaseの輸送のメカニズムの一端を解明」
京大発表 (2008年6月13日)
「お好みの蛍光色素で薬物受容体を瞬時に標識:創薬研究への応用」
タンパク3000プロジェクト(2002−2006)に関する終了後(2007年度以降)のプレスリリースはこちらをご覧ください。
ターゲットタンパク研究プログラム発プレスリリース
九大/福井宣規先生のグループの成果
−免疫システムは、感染や病変から身を守るための防御機構として機能する反面、正常な細胞や組織に対して過剰に反応することにより、自己免疫疾患やなどを引き起こすことが知られている。リンパ球といった白血球が標的臓器に集まって、活性化されることで引き起こされる病態である。免疫細胞に特異的に発現し、免疫応答を制御する鍵となるタンパク質DOCK2は、Racタンパク質を活性化させ、アクチンの重合を誘導し、白血球の運動や活性化を制御する。そのため、DOCK2はこれら免疫難病をコントロールするためのターゲットタンパク質である。DOCK2はDHR-2ドメインを持ち、このドメインを介して、Racに結合しているGDP(グアノシン二リン酸)をGTPに変換することで、Racを活性化する。そこで九州大学福井宣規らの研究グループは、創� �オープンイノベーションセンター(長野哲雄センター長)が保有する化合物ライブラリーの中から、DOCK2のDHR-2ドメインとRacの相互作用を阻害するものを探索した。リンパ球の運動を抑制すること、細胞に対して毒性を示さないことを指標にスクリーニングを続けた結果、最終的に有望な化合物CPYPPを同定した。リンパ球にCPYPを作用させると、ケモカインや抗原の刺激によって誘導されるRacの活性化がブロックされ、その結果リンパ球の運動や増殖が顕著に抑制されることを実証した。今後CPYPPの構造をベースに最適化を進めることで、より効果的かつ安全にDOCK2の機能を抑制する化合物が創出でき、免疫難病に対する新しい治療薬や予防薬の開発につながることが期待できる。
課題 | 医薬A2タンパク質構造に立脚したDOCK2シグナル伝達機構の解明と創薬研究への応用(代表研究者:福井 宣規) |
リリース | 九大‐JST共同発表(2012年4月20日)) 白血球の炎症反応をブロックできる化合物を発見
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論文 | Chemistry and Biology Blockade of Inflammatory Responses by a Small-Molecule Inhibitor of the Rac Activator DOCK2 Akihiko Nishikimi, Takehito Uruno, Xuefeng Duan, Qinhong Cao, Yuji Okamura, Takashi Saitoh, Nae Saito, Shunsuke Sakaoka, Yao Du, Atsushi Suenaga, Mutsuko Kukimoto-Niino, Kei Miyano, Kazuhito Gotoh, Takayoshi Okabe, Fumiyuki Sanematsu, Yoshihiko Tanaka, Hideki Sumimoto, Teruki Honma, Shigeyuki Yokoyama, Tetsuo Nagano, Daisuke Kohda, Motomu Kanai, Yoshinori Fukui
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阪大/高木淳一先生のグループの成果
−高等生物の細胞接着において主要な役割を果たすインテグリンは、αとβサブユニットのヘテロ二量体であり、ヒトでは24種類知られている。そのなかでもα5 β1インテグリンは、Arg-Gly-Asp(RGD)配列を認識するフィブロネクチン 受容体として最初に同定され、ほ乳類の発生に必須であるにもかかわらず、これまでその原子分解能の構造情報は得られていなかった。多くの糖鎖を含み、ドメイン間の可動性の高さのためにこれまで結晶化が困難であったα5β1インテグリンについて、高木淳一らはCHOlec細胞を用いた発現とアロステリック阻害抗体SG/19との複合体化を通して、そのリガンド結合領域の構造決定に成功した。決定された構造から、SG/19がβ1サブユニットの可動性の高い2つのドメインの間の角度をほぼ直角に固定することでインテグリンの活性を阻害しているという阻害メカニズムが明らかになった。しかもこの「阻害された」状態のインテグリンの結晶に、結合リガンドのミメティックであるRGDペプチド溶液をソーキングすると、驚くべきことに複合体が形 成し、その構造解析にも成功した。リガンド結合前と後の2つの構造を比べることにより、なぜインテグリンが二価金属イオン依存的な細胞接着を仲立ちするのか、なぜCa2+は高濃度において細胞接着にむしろ阻害的に働くのか、などの理由が明らかになった。ほ乳類細胞における最も基本的な接着装置の原子構造の解明によって、発生、増殖、分化、における接着シグナルの分子論的理解がさらに進むことが期待される。
京大/辻本豪三先生のグループの成果
−現在、肥満および肥満に随伴する様々な代謝異常(脂肪肝、糖尿病など)が世界的に大きな健康上の問題となっている。この世界的な肥満大流行は、特に先進国の食生活がカロリー過剰摂取となりがちな高脂肪食であることに起因している。この食事性肥満に関連する原因遺伝子は見つかっていなかった。辻本豪三らは、既に新規の脂肪酸のセンサー分子であるGPR120受容体を発見していた。今回、この分子を欠損するマウスモデルを作出し、GPR120受容体の生理機能を解析するとともに、フランスを中心とする欧州のチームと共同で、この脂肪酸センサー分子の肥満患者に於けるゲノム解析研究を行い、脂肪センサーGPR120が食事性肥満の原因遺伝子であることを見出した。具体的には、GPR120遺伝子欠損マウスは高脂肪食負荷により肥満、糖� ��病、脂肪肝の代謝異常を発症し、その種々の代謝異常は、GPR120遺伝子を欠損した脂肪組織ではその分化が遅延し、さらに脂肪酸合成の低下をきたすことによることを明らかにした。また、ヒトのGPR120のアミノ酸配列に1箇所変異が入った変異受容体では、センサー機能に異常が起こることを見出した。欧州の約2万人の肥満患者の遺伝子解析より、この変異を有すると、食事性肥満を発症する可能性が高いことを明らかにした。以上の研究は、食事性脂肪のセンサーであるGPR120が、食事性の肥満に強く関与することを示しており、肥満や糖尿病に代表される代謝疾患に対して、GPR120を標的とした予防・治療薬への応用の可能性が期待される。
課題 | 生産 C1化合物ライブラリーの基盤構築とタンパク質制御技術の開発(代表研究者:長野 哲雄) |
リリース | 京大発表(2012年2月20日) 脂肪センサーGPR120が食事性肥満の原因遺伝子であることの発見 脂質センサーGPR120の機能不全はマウスとヒトの両方で肥満をひき起こす |
論文 | Nature.2012 February 19 Dysfunction of lipid sensor GPR120 leads to obesity in both mouse and human Atsuhiko Ichimura, Akira Hirasawa, Odile Poulain-Godefroy, Amelie Bonnefond, Takafumi Hara, Loic Yengo, Ikuo Kimura, Audrey Leloire, Ning Liu, Keiko Iida, Helene Choquet, Philippe Besnard, Cecile Lecoeur, Sidonie Vivequin, Kumiko Ayukawa, Masato Takeuchi, Kentaro Ozawa, Maithe Tauber, Claudio Maffeis, Anita Morandi,Raffaella Buzzetti, Paul Elliott, Anneli Pouta, Marjo-Riitta Jarvelin, Antje Korner, Wieland Kiess, Marie Pigeyre, Roberto Caiazzo, Wim Van Hul, Luc Van Gaal, Fritz Horber,Beverley Balkau, Claire Levy-Marchal, Konstantinos Rouskas, Anastasia Kouvatsi, Johannes Hebebrand, Anke Hinney, Andre Scherag, Francois Pattou, David Meyre,Taka-aki Koshimizu, Isabelle Wolowczuk, Gozoh Tsujimoto, Philippe Froguel |
理研/横山茂之先生と九大/福井宣規先生のグループの成果
−免疫システムは、感染や病変から身を守るために必須の防御機構であるが、正常な細胞や組織に対してまで過剰に反応すると、自己免疫疾患や移植片拒絶などを引き起こしてしまう。2001年に九大福井宣規らは、免疫系細胞に特異的に発現して免疫応答を制御する鍵となるDOCK2(dedicator of cytokinesis 2)が免疫系細胞に特異的に発現し、これらの免疫応答を制御する鍵となるタンパク質であることを明らかにした。DOCK2は、Racタンパク質を活性化させ、アクチンの重合を誘導し、免疫系細胞の運動や活性化を制御する。DOCK2は、実際の細胞内でELMO1と結合し複合体として働くが、ELMO1がDOCK2の機能にどのように寄与しているかなど、その詳細な分子メカニズムについてはこれまで全く不明であった。理研横山茂之らと九大福井宣規らの共同研究グループは、巨大タンパク質であるDOCK2(1830個のアミノ酸で構成)とELMO1(727個のアミノ酸で構成)が相互作用する領域を探索し、独自に開発した無細胞タンパク質合成系を用いて迅速なスクリーニングを行い、DOCK2のN末端とELMO1のC末端 とが結合することで安定な複合体を形成することを見いだした。その領域を用いてX線結晶構造解析に適した試料を調製、結晶化し、複合体の立体構造を2.1 Aの分解能で決定することに成功した。この2つのタンパク質は密接に結合することで互いの自己抑制を解除しあい、それぞれの本来の機能を発揮できる状態へ移行させていることを明らかにした。この成果は、自己免疫疾患や移植片拒絶など難治性免疫疾患に対応した新しいアプローチによる治療薬、予防薬の開発につながることが期待される。
課題 | 生産 C1タンパク質生産技術開発に基づく「タンパク質発現ライブラリー基盤」の構築(代表研究者:横山 茂之) 医薬 A2タンパク質構造に立脚したDOCK2シグナル伝達機構の解明と創薬研究への応用(代表研究者:福井 宣規) TP Atlas |
リリース | 理研‐九大共同発表(2012年2月14日) 免疫系細胞が刺激に応答し動く仕組みを原子レベルで解明 |
論文 | PNAS. 2012 February 13 Structural basis for mutual relief of the Rac guanine nucleotide exchange factor DOCK2 and its partner ELMO1 from their autoinhibited forms Kyoko Hanawa-Suetsugu, Mutsuko Kukimoto-Niino, Chiemi Mishima-Tsumagari, Ryogo Akasaka, Noboru Ohsawa, Shun-ichi Sekine, Takuhiro Ito, Naoya Tochio, Seizo Koshiba, Takanori Kigawa, Takaho Terada, Mikako Shirouzu, Akihiko Nishikimi, Takehito Uruno, Tomoya Katakai, Tatsuo Kinashi, Daisuke Kohda, Yoshinori Fukui and Shigeyuki Yokoyama PDB ID: 2RQR, 3A98, 3B13 |
京大 / 岩田想先生のグループの成果
−近年、新規医薬品開発においては、薬剤の標的となるタンパク質の立体構造に基づいた合理的な薬剤設計が有効であることが示されている。しかし、最も重要な医薬品標的分子ファミリーであるGタンパク質共役型受容体(GPCR)は、細胞膜に埋まった構造を持ち結晶化における糊代となる親水性表面が少ないため、質の良い結晶作製が困難であり、ヒトのGPCRの立体構造もこれまでに数個しか解析されていなかった。京大岩田想らのグループは、GPCRを効率よく結晶化するために、標的分子と特異的に結合する抗体を結晶化における糊代とすることに着目し、まず立体構造を認識するモノクローナル抗体の高効率作製法を開発した。その結果、パーキンソン病の薬剤標的であるアデノシンA2a受容体に対する抗体を多数取得し、この抗体を用い ることでアデノシンA2a受容体と抗体の複合体の結晶化に成功し、その立体構造をX線結晶構造解析により決定した。この複合体の立体構造解析からは、抗体分子がアデノシンA2a受容体の細胞内側表面の「くぼみ」に深く突き刺さることにより、受容体の活性化に伴う構造変化を抑制し、機能を完全に阻害していることが明らかになった。この「くぼみ」はGPCRの活性を制御することができる新規の薬剤結合部位であり、全く新しい阻害機構を持った薬剤の設計が可能になると期待される。
課題 | 生命B4創薬に繋がる輸送体膜蛋白質の構造、機能の解明(代表研究者:岩田 想) TP Atlas 生産D2膜タンパク質結晶化の革新的支援法の開発(代表研究者:岩田 想) TP Atlas |
リリース | JST‐京大‐東大‐千葉大共同発表(2012年1月30日) 抗体を用いて創薬標的膜たんぱく質の結晶構造を得ることに成功 アロステリックな逆作動薬としての活性をもつ機能性抗体によるGタンパク質共役受容体の不活性化の分子機構 |
論文 | Nature. 2012 January 29 G-protein-coupled receptor inactivation by an allosteric inverse-agonist antibody Tomoya Hino, Takatoshi Arakawa, Hiroko Iwanari, Takami Yurugi-Kobayashi, Chiyo Ikeda-Suno, Yoshiko Nakada-Nakura, Osamu Kusano-Arai, Simone Weyand, Tatsuro Shimamura, Norimichi Nomura, Alexander D. Cameron, Takuya Kobayashi, Takao Hamakubo, So Iwata & Takeshi Murata PDB ID: 3VG9, 3VGA |
東大 / 濡木理先生のグループの成果
−ヒトから微生物まで殆どの生物の光情報の受容は、発色団としてレチナールを結合したロドプシンファミリータンパク質によって担われている。その中でチャネルロドプシン(ChR) は緑藻類から発見された、初の(そして現在まで唯一の) 光駆動型陽イオンチャネルで、青色光が当たると陽イオンを細胞内に輸送するという機能を有している。光照射によって好きな神経細胞を好きなタイミングで活性化できる非常に有用なツールとして利用され続けてきた。濡木理らのグループは、現在までに報告されているChR同士のキメラ体を多数作製することで、ChRを安定かつ大量に精製する方法を確立し、脂質中に膜タンパク質を再構成して結晶化する脂質キュービック法という結晶化法を用いる事でChRの結晶を調製することに成功した。 続いて、本研究プログラムで開発された大型放射光施設SPring-8のBL32XUビームラインを活用して、ChRの閉じた状態の構造を高分解能で決定することに成功した。さらに、その光サイクルにおける初期反応、イオン輸送経路、ゲートを解明した。今回得られた構造情報を基盤としてChRの性質が改良され、神経生物学のツールとしてより有用な変異型ChRが創出されることが期待される。
課題 | 生命B5 非翻訳RNAによる高次細胞機能発現機構の解明(代表研究者:濡木 理) TP Atlas |
リリース | 東大発表(2011年1月23日) 光が当たるとイオンを通すメカニズムを明らかに |
解説 | 著者自身の執筆による日本語のレビュー © 2012加藤英明・石谷隆一郎・濡木 理 Licensed under CC 表示 2.1 日本 |
論文 | Nature. 2012 January 23 Crystal structure of the channelrhodopsin light-gated cation channel. Kato HE, Zhang F, Yizhar O, Ramakrishnan C, Nishizawa T, Hirata K, Ito J, Aita Y, Tsukazaki T, Hayashi S, Hegemann P, Maturana AD, Ishitani R, Deisseroth K, Nureki O. PDB ID: 3UG9 |