2012年4月13日金曜日

異種抗体の生産 - アブジェニックス インク.


発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野は、生存している哺乳類の宿主における、異種の特異的結合タンパクの生産に関する。
【背景技術】
【0002】
トランスジェニックな動物を生産するための能力は、マウスの胚の幹細胞を培養するための能力、及びマウスの生殖系列への次の遺伝(伝達)の為に、これらの細胞に遺伝子の修飾を導入するための能力の出現で革命をもたらされた。このように一つは、宿主に外来遺伝子、特に異種の結合タンパクを生産するヒトの遺伝子の挿入により新規な生産物を作ることができる、動物の種を生産するために、内生の遺伝子を修飾する機会をもつ。動物のモデルにおけるインビボのこのような遺伝子の発現は、遺伝子の機能、遺伝子の発現の制御、そのプロセシング、� ��々の薬剤又はその類似物に対する反応のための研究に供することができる。更に、種々の病気を模擬するものを含む新しいフェノタイプ(表現型)を有する動物が、生産されるかもしれない。例えば、優性の突然変異を導入し、又は、劣性の突然変異を補充することに興味がもたれる。特別の遺伝子によって、所望される突然変異を獲得することの困難性は、大いに改められるだろう。いくつかの遺伝子の標的は、比較的修飾になじみ易いことを立証した一方で、他の標的は、修飾に極めて抵抗があることを立証した。
【0003】
トランスジェニックな動物を創生するための条件のために、トランスジェニックな動物の生産の成功を高める新しい方法を提供することにかなり興味がある。特には、何百キロベースも含んでいる大� ��いDNAフラグメントを挿入することが望まれる。このことは、哺乳類の細胞に完全な形態で大きいフラグメントを挿入するための能力、統合の効率、そのフラグメントに存在する遺伝子の機能的な能力、子孫への生殖系列の遺伝について、大いに関係がある。更には、大きいDNAフラグメントの挿入のためのこのような手法は、継続しているヒトゲノムプロジェクトにおいて、識別された大きいDNAフラグメントの機能の決定に役立つ。
【0004】
特には、マウスのような小さい研究用動物において、異種の特異的結合タンパク、例えば、ヒトのモノクローナル抗体の生産に大きな関心がある。モノクローナル抗体は、診断と治療の両方に有用性がある。特異的なエピトープに結合するための能力により、それらは、その� ��ピトープを有する分子を識別するために独特な利用をされる。或いは、それら自身により、又は、もう一つの半分との結合において、診断や治療に特異的な部位に対して、管理される。
【0005】
モノクローナル抗体は、エピトープに対する結合領域を規定するために、一緒に結合する重鎖(H鎖)と軽鎖(L鎖)を含む。それぞれの鎖は、可変領域と定常領域とからなる。定常領域のアミノ酸配列は、抗体を産生する宿主と同様に、抗体の特別なイソタイプに対して特異的である。
【0006】
定常領域の配列と抗体が産生される種(species)との間の関係の為に、宿主の血管系への異種の抗体の導入は、免疫応答を引き起こす。慢性疾病の場合には、異種の抗体が反復的に導入されるが、この場合に抗体を投与することは 非実用的である。抗体が急速に破壊され、有害な作用が現れることがあるためである。それゆえ、同型間の又は同種異型の抗体の源を提供するために、多くの努力がなされた。一つの技術は、即ち、組換えDNA技術を利用するものであり、即ち、宿主からの重鎖と軽鎖に対する遺伝子が識別され、定常領域をコードする領域が単離される。これらの領域は、次いで、特異的エピトープに向けられたもう一つの種に由来するイムノグロブリン遺伝子の部分をコードする可変領域に結合された。
【0007】
結果として得られた部分的にキメラな異種抗体は、完全な異種抗体を用いるよりもかなり有用性が高いが、未だ多くの不都合な点がある。可変領域及び定常領域の識別、単離、結合は、実質的な作業を要する。更に、ある種由来 の定常領域を別の種由来の可変領域に結合することは、可変領域の特異性と親和性を、可変領域の所望の特性が失われるように、変える可能性がある。また、可変領域において、種特異的なフレームワークと高頻度可変(超可変)領域の配列もある。これらのフレームワークと高頻度可変(超可変)の配列は、望ましくない抗原反応を生じることがある。
【0008】
それ故に、関心のある抗原で宿主を免疫することにより、宿主に投与のための同種異系の抗体を生産することが、強く望まれている。霊長類、特にヒトに対してこのアプローチは実際的でない。生産されたヒトの抗体は、関心のあるエピトープに対して予め免疫された宿主からの、入手可能な脾臓の偶然の存在に基づいていた。ヒトの末梢血のリンパ球が、モノクロ ーナル抗体の生産に使用されうるが、これらは、融合に成功せずに、大抵IgMのみに至った。更に、多くの治療や診断の適用において、ヒトのタンパク即ち所望の標的に対するヒト抗体反応を作ることは特に困難である。それ故に、ヒトのための同種異型(allogeneic)の抗体を生産するために別のルートを見つけることには、大いに関心がある。
【0009】
関連文献
非特許文献1及び2は、胚性幹細胞における相同組換えによるβ2−マイクログロブリンの遺伝子座の不活性化に関して記載する。非特許文献3は、ヒトIg VH遺伝子座に関して記載する。非特許文献4は、酵母合成染色体(YAS)ベクターに関して、記載する。更に、非特許文献5及び6もまた参照される。Sakanoらは、非特許文献7にイムノグロブリンのH鎖遺伝子の多様性セグメントに関して記載している。非特許文献8は、マウスのIgAのH鎖の遺伝子配列を記載する。非特許文献9は、マウスの可変なH鎖領域に関して記載する。更に、非特許文献10、11、12 と特許文献1もまた、参照される。非特許文献13、14及び15は、ヒトH鎖を有するモノクローナル抗体に関して記載する。非特許文献16は、ヒトDNA断片を含む酵母合成染色体(YAS)のライブラリの構成に関して記載する。酵母合成染色体(YAS)ベクターは、非特許文献4に、記載されている。非特許文献17には、相同組換え又はポリエチレングリコ−ル−媒介スフェロプロスト融合を用いた胎生期ガン細胞へのトランスフォーメーション(形質転換)を用いて、酵母合成染色体(YAS)のヒト−誘導インサート内へのネオマイシン抵抗性カセットの挿入に関して記載されている。非特許文献12及び18は、哺乳類の細胞内への、ヒトDNAを有する酵母合成染色体(YAS)の移入に関して記載する。非特許文献19には、ヒト� ��伝子を有する酵母合成染色体(YAS)のマウス細胞での発現に関する記載がある。非特許文献20は、ヒトHPRT遺伝子を含む酵母合成染色体(YAS)のマウス細胞での発現に関して記載する。非特許文献21は、異型接合の胚性幹細胞を選択的に相同に突然変異した細胞に成長させるための高濃度のG418の利用に関して記載する。マウスの繊維芽細胞との酵母のプロトプラスト融合に関しては、非特許文献11及び12に記載されている。非特許文献22は、YACsのターゲティングによる変性(targeted alterations)に関して記載する。非特許文献23は、ヒトのイムノグロブリンL鎖(カッパー)(IgK)の遺伝子座について記載する。非特許文献24及び25は、YACsにあるヒトのイムノグロブリンH鎖(IgH)の遺伝子座のクローニングに関して記載する。
【0010】
【特許文献1】PCT出願PCT/US91/00245
【非特許文献1】Thomas and Capecchi (1987), Cell, 51:503-512
【非特許文献2】Koller and Smithies (1989), Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86:8932-8935
【非特許文献3】Berman et al. (1988), EMBO J. 7:727-738
【非特許文献4】Burke, et al. (1987), Science, 236:806-812
【非特許文献5】Garza et al. (1989), Science, 246:641-646
【非特許文献6】Brownstein et al. (1989), Science, 244:1348-1351
【非特許文献7】Sakano, et al. (1981)Nature, 290:562-565
【非特許文献8】Tucker et al. (1981), Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 78:7684-7688
【非特許文献9】Blankenstein adn Kruwinkel (1987), Eur. J. Immunol., 17: 1351-1357
【非特許文献10】Joyner et al. (1989), Nature, 338:153-155
【非特許文献11】Traver et al. (1989), Proc. Nat. Acad. Sci. USA 86:5898-5902
【非特許文献12】Pachnis et al. (1990), Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 87:5109-5113
【非特許文献13】Bruggemann et al., Proc. Nat. Acad. Sci. USA; 86:6709-6713 (1989)
【非特許文献14】Bruggemann et al., Behring Inst. Mitt. 87:21-24 (1990)
【非特許文献15】Bruggemann et al., Eur. J. Immunol. 21:1323-1326 (1991)
【非特許文献16】Albertsen et al., Proc. Nat. Acad. Sci. USA 87:4256-4260 (1990)
【非特許文献17】Pavan et al., Mol. and Cell. Biol. 10(8): 4163-4169 (1990)
【非特許文献18】Gnirke et al., EMBO Journal 10(7):1629-1634 (1991)
【非特許文献19】Eliceiri et al. Proc. Nat. Acad. USA 88:2179-2183 (1991)
【非特許文献20】Huxley et al., Genomics 9:742-750 (1991)
【非特許文献21】Mortensen et al., Mol. and Cell. Biol. 12(5):2391-2395 (1992)
【非特許文献22】Davies et al., Nucl. Acids Res. 20:2693-2698 (1992)
【非特許文献23】Zachau, Biol. Chem. 371:1-6 (1990)
【非特許文献24】Matsuda et al, Nature Genetics 3:88-94 (1993)
【非特許文献25】Shin et al., EMBO 10:3641-3645 (1991)
【発明の開示】
【0011】
関連出願に対するクロス−リファレンス
本願は、
(1)1990年1月12日出願の米国特許出願No. 07/466,008の、
(2)部分継続出願たる1990年11月8日出願の米国特許出願No. 07/610,515 の、また
(3)部分継続出願たる1992年7月24日出願の米国特許出願No. 07/919,297の、さらに、
部分継続出願であり、上記の出願人の全ての記載は、引用により本願に組込む (incorporated by reference)。
【0012】
発明の概要
適当な抗原で宿主を免疫することによって、ヒト以外の生体の宿主内で、異種間に特異的(xenogeneic specific)な結合タンパクが生産される。
【0013】
好ましいヒト以外の宿主は、次のような特徴を持つものである。(1)イムノグロブリンの重鎖を内生できないこと、(2)イムノグロブリンの軽鎖を実質的に内生できないこと、(3)異種のイムノグロブリン又はイムノグロブリンの構造類似体を生産するための、異種のイムノグロブリンの軽鎖及び重鎖を生産することができること。このような宿主は、内生のイムノグロブリンのための全体の遺伝子座(locus)が、部分的に或いは完全に異種のイムノグロブリンのための遺伝子座(locus)によって置換されているか、異種のイムノグロブリンのための遺伝子座が宿主細胞の染色体に挿入され、かつ内生のイムノグロブリン領域が不活性化されているものである。
【001� ��】
重鎖又は軽鎖の為のイムノグロブリンの遺伝子座を、不活性化又は置換のために、(同種間で)相同組換えを行うことによって、これらの種々の代替物(alternatives)が得られるだろう。
【0015】
更には、少なくとも 100 kb の大きさの断片の異種DNAを特にはヒトDNAを、宿主動物に特にはマウスに、挿入するための新規な方法が提供される。
その方法は、幹細胞のゲノムに組み込むために胚の幹細胞(ESセル)内に、少なくとも100 kb の異種DNA断片を含む酵母の人工的な染色体(YAC)を導入し、YACに存在するマーカーによって、組み込まれたYACを含む幹細胞を選択し、胚の中にYAC含有ESセルを取り入れ、胚からキメラマウスを産生することによる。キメラな動物は、YACに対して異型接合である動物を提供するために交配される。異型接合の動物は、組み込まれたYACに対して同型接合の子孫を産出するために交配される。
【0016】
発明の詳細な説明
定常の及び/又は可変の領域で、或いはその他の重要なエフェクター(effector)ペプチド配列をもつ、新規なトランスジェニックヒト以外の宿主、特には哺乳類の宿主、通例マウスが提供され、かかる宿主は、抗原に対する免疫応答を組込むことができ、その応答は、異種の� ��には霊長類、更にはヒトの有する抗体を、産生する。「トランスジェニック」(transgenic)の語は、遺伝子工学的に処理された変異(engineered modification)を含む動物を意味し、特には、本発明に関して、その細胞の全部に(in all of its cell)、ヒトのイムノグロブリン遺伝子の導入を意味する。宿主は、内生のイムノグロブリンのサブユニットをコードする遺伝子座(loci)の不活性化又は異種DNA、例えばヒトのイムノグロブリンをコードするDNA、の導入の結果として、異種(xenogeneic)のイムノグロブリン或いはその構造類似体を生産できることを、特徴とする。これらの修飾(変異)は、C−末端で機能的なペプチドに結合される可変領域結合部位のアセンブリを提供する(assembly of the variable region binding site)、異種定常領域の少なくとも一部を保存する。機能的なペプチドは多くの形態(forms)或いは構造(conformetaions)をとることができ、酵素、成長因子、結合タンパク、リガンド、サイトカイン、エフェクタータンパク(effector protein)、キレートタンパク(chelating protein)の役割をする。その抗体はIgA、D、E、G又はMのような何等かのイソタイプであるか、イソタイプ内の(小区分である)サブタイプであっても良い。
【0017】
最初の方針において、個別のステップとして、ヒトのような異種の軽鎖及び重鎖のイムノグロブリン遺伝子が宿主の生殖系列(例えば精母細胞又は卵母細胞)に導入される。そして別のステップでは、対応する(corresponding)宿主の遺伝子は、相同的組み換えを用いた不活性化によって非機能的(機能を有しないよう)にさせられる。ヒトの重鎖及び軽鎖のイムノグロブリンの遺伝子は、適当な真核又は原核の微生物内で再構生され、結果として生じたDNAフラグメントは、適当な宿主内に、例えば受精させたマウスの卵母細胞の前核或いは胚の幹細胞内� ��導入される。内生の宿主のイムノグロブリンの遺伝子座(loci)の不活性化は、宿主細胞、特には胚の幹細胞或いは受精させたマウスの卵母細胞の前核における相同的組み換えによる、適当な遺伝子座の標的ディスラプション(targeted disruption)によって達成される。標的ディスラプション(ターゲティングとも略称する)には、標的座の損傷又は欠失、或いは遺伝子座内への挿入、例えば選択性のあるマーカー(selectable marker)の挿入に伴って起こる標的座内の欠失が伴う。胚の幹細胞の場合において、キメラな動物は、変異された胚の幹細胞から誘導され、産生し、更に生殖系列を通じて遺伝子変異を遺伝(伝達)することができる。不活性化された内生の遺伝子座を持つ系統と、導入されたヒトのイムノグロブリンの遺伝子座を持つ宿主との交配は、その産生される抗体が全く異種のもの、例えばヒトのものである、動物をつくる。
【0018】
もう一方の第二の方針では、ヒトの重鎖及び軽鎖のイムノグロブリンの遺伝子座の少なくとも部分(portions)が、胚の幹細胞における相同組換えによって、相当する内生のイムノグロブリンの遺伝子座を直接置換するために用いられる。この場合に、内生のイムノグロブリンの不活性化及び置換は同時に� ��こる。次には、胚の幹細胞誘導細胞が生殖系列に寄与して、キメラな動物の創生即ち産生・生殖(generation)が生じる。
【0019】
構造、個々のドメイン(indivisual domains)をコードするエキソンの相対的配座、及びスプライス部位及び転写要素の配座は、変更の程度として理解されるので、これらの方針は、数種類の動物のイムノグロブリン鎖の遺伝子座の既知の構造を基礎とする。ヒトの場合には、イムノグロブリンの重鎖(IgHhu)の配座は14番目の染色体にある。5'−3'方向への翻訳において、配座は、可変領域遺伝子(VH)の大きいクラスター、多様性(D)領域遺伝子を含み、その後には結合(JH)領域遺伝子(連関遺伝子)及び定状部(CH)の遺伝子クラスターが続く。その配座の大きさは、約1,500から約2,500 kb(キロベース)までであると評価される。B−細胞の発達の間、生殖系列のIgH配座からの断続的な遺伝子セグメントがDNAの物理的並び換え(rearrangement)に依って、一列に並べられる(juxtaposed)。機能的重鎖Igポリペプチドを生産させるために、VH、D、JH領域からの3つの断続的なDNAセグメントは特異的に連続して起こる方法で(in a specific sequential fashion)、結合されねばならない。即ち、最初にJHにDが結合し、次にはDJHにVHが結合し、機能的なユニットVHDJHが生じる。一度、VHDJHが形成されたなら、エキソンとイントロンからなる特異的VHDJHHユニットを鋳型として利用して、Ig配座の翻訳に続いて、特異的重鎖が生じる。
【0020】
イムノグロブリンの軽鎖(IgL)のために、2つの配座がある。即ち、ヒトの2番目の染色体にあるカッパー配座とヒトの22番目の染色体にあるラムダ配座である。IgL配座の構造は、D領域が存在しない点を除けば、IgH配座のそれに類似している。IgHの並び換え(rearrangement)に引き続いて、軽鎖の配座の並び換え(rearrangem ent)が、カッパー鎖又はラムダ鎖のJLにVLが結合することによって、同様に行われる。ラムダ配座及びカッパー配座の大きさは、それぞれ約1,000kbから2,000kb程度である。特にB−細胞における、並べ換えられた(rearrangement)IgH及びIgκ又はIgλ軽鎖の発現は、抗体分子を産生させる。
【0021】
IgHhu配座を単離し、複製し、翻訳するために、酵母の人工的染色体(yeast artificial chromosome)即ちYACを利用することができる。異種(xenogeneic)のDNAを持つYACは、酵母のスフェロプラスト化即ちES細胞の融合、微量注入法(microinjection)及びリポフェクション(lipofection)を含めた種々の方法によって、ES細胞又は卵母細胞内へ導入される。YACは宿主ゲノム内へ、ランダムに(即ち非相同的に)統合(integrate)する、即ち組込まれる。もし、ES宿主細胞内へ異種DNAを持つYACを導入するために、酵母のスフェロプラスト・ES細胞融合が行われるが、その場合、一つの酵母宿主細胞中の2個又はそれ以上のYACが同じ宿主ES細胞内へと同時に導入できる。このアプローチの利点は、例えばヒトの重鎖及び軽鎖のイムノグロブリン配座のような、夫々異種のDNAを含む多様な(multiple)YA� �sを、宿主細胞内の一つの染色体中へ導入させることができることにある。このことにより、完全なヒトイムノグロブリンを生産することができる宿主を産生するために、個別の(indivisual)ヒトIg遺伝子(genes)を含んでいる動物を繁殖する必要性がなくなる。例えば、単一のYACを含む酵母の菌株(strain)は、HPRTのような哺乳類の選択的マーカーや、YACのアーム(arm)内のLYS2のような酵母の選択的マーカーを導入するために、pLUTO(後述)のようなベクターでターゲティングされる(targeted)。ターゲティングされた菌株からの染色体DNA(chromosomal DNA)は、第二の異なったYACを含む、第二の(たいてい半数体である)酵母菌のlys2突然変異体の形質転換(transform)に使用される。次いでLys+コロニーは、2個のYACを含むクローンを識別し、それらの大きさが変更していないことを確認するために、パルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)によって分析される。その後に、異なった選択的マーカー、例えば(もし宿主がade2突然変異体であるなら)ADE2を持つ付加的なYAC(additional YACs)を、形質転換によって付加させても構わない。あるいはまた、酵母のYAC含有株が哺乳類の選択的マーカー(例えばHPRT)を導入するために、pLUTOのようなベクターでターゲティングされ、上述のように、次には反対の(opposite)交配型の第二のYAC含有株と交配される。上記のような二倍体の酵母細胞中に、2個のYACの存在が確認される。二倍体の酵母株は融合に直接利用されるか、標準的な手法を用いて減数分裂や胞子形成(ascosporogenesis/sporulation)を行わせる。次いで、減数分裂の産生物は、2個のYACを含む半数体のクローンを識別するためにスクリーニングされる。上記の各アプローチでは、第二のYACは、第一のYACの導入の前に、HPRT或いは他の選択的マーカーでターゲティングにされる� ��同様に、各YACが異なる酵母の選択的マーカーを含むなら、株の増殖期において、両方のYACは保持されて、遺伝的に選択されうる。次いでES細胞との融合を、単一のYACを含む酵母細胞で行うのと同じ方法で行う。多くの酵母の染色体は、YACといっしょに統合(組込)されるので、一つのYAC(例えばYACマーカーがHPRTで、ES細胞がHPRT−であるなら、HATRクローン)に存在する哺乳類の選択的マーカーを発現するESクローンの実質的な部分は、組込まれた双方(二つ)のYACを持つことが予想される。サザン分析及び/又はPCRのような方法がこのようなクローンを識別するために利用される。パルスフィールドゲル電気泳動を介したサザン分析は、YAC統合の程度を特徴づけるた� �に利用される。
【0022】
全体のIgHhu配座は、1個若しくは数個のYACクローン内に、Neo、HPRT、GPT、β−galなどのような哺乳類のマーカーと共に含有されることができる。同じことが、Ig軽鎖の配座についても当てはまる。相同な重複領域を持つYAC間での、相同組換えによる完全(intact)な生殖系列のIg遺伝子座の再構成(reconstitution)は、酵母内で達成される。この方法において、ヒトのIg鎖をコードするDNAフラグメントの単離物が入手できる。或いはまた、単一のYACで完全な生殖系列の配座を、直接的にクローン化させることができる。
【0023】
抗体に高い親和性を有する幅広いスペクトルを獲得するために、一つのYAC(one)がV領域全体(entire V region)を含む必要はない。種々のV領域の遺伝子のファミリーは、ヒトのV領域のクラスター内に挿入(interspersed)される。このように、V領域の完全な補体よりもむしろ、ヒトの重鎖及び軽鎖のIg配座(Berman et al., EMBO J. (1988) 7:727-738)のV領域の既知の遺伝子のサブセットを獲得することによって、トランスジェニックな宿主は免疫され、強い免疫応答を組込ませることができ、親和性の高い抗体を提供する。この方法において、染色体の比較的小さいDNAフラグメントが、使用される。例えば、IgHu配座の670 kbのフラグメントはNotI−NotI制限断片に含まれることが報告されている。そしてこれは、V領域の変種を提供するために利用される(Berman et al., supra)。多様性の増加は、種々のD領域とJ領域及び体細胞突然変異を伴う組換えによってもまた提供される。
【0024】
宿主のイムノグロブリンの遺伝子座を非機能的にさせる(機能を有しないものにする)ため、相同組換えを行うことができ、それによって内生のイムノグロブリンの産生を阻害する(内生イムノグロブリン重鎖及び軽鎖の)遺伝子座にDNAが導入される。2個の重鎖対立遺伝子及び2個の軽鎖遺伝子座、(ラムダ遺伝子座を無視することもできるが)それぞれ2個の対立遺伝子を持つカッパーとラムダ、があるので、対立遺伝子のそれぞれを不活性化させる多重遺伝子導入(multiple transformations)が生ずるはずである。相同組換えは、遺伝子座のそれぞれを、相同なDNAの導入によって機能的に不活性にさせ、胚の幹細胞内の標的配座を乱し(ディスラプト)或いは欠失できる構造(a construct)を経由して、受容胞胚への修飾(変異)細胞の導入を続いて行う。後続の交配(breeding)によって、不活性化された遺伝子座の生殖系列の遺伝(伝達)が可能となる。それゆえに、異型接合の子孫の育種ないし交配(breed)を選択し、異型接合の親から同型接合の子孫を選ぶことができる。
【0025】
第二の、上述されたもう一つの方針では、類似する内生のイムノグロブリンとの相同組換えに使用される構造に属するヒトイムノグロブリン遺伝子座のフラグメントを少なくとも促進することにより、工程の数を、減少させることができる。その結果、ヒトの遺伝子座は、少なくとも宿主のイムノグロブリン遺伝子座に代わって置換され、宿主のイムノグロブリン遺伝子座の不活性化が生じる。本発明の特別の関心事としては 、単一の(遺伝子座の)不活性化のためのトランスフォーメーション(遺伝子導入)を用いることであり、その後、同型接合の子孫を生産するために、異型接合の子孫を交配させる。ヒトの遺伝子座を置換し、或いは不活性化のために宿主の遺伝子座へ挿入する場合、トランスフォーメーションの数は、三つのトランスフォーメーションに限ることができる。そして、既に指摘したように、余り用いない遺伝子座を無視することが選択でき、その場合トランスフォーメーションは二つのトランスフォーメーションに限定できる。さらに、各遺伝子座に対して、各別の工程として、不活性化を行うことを、不活性化された一つ又はそれ以上の遺伝子座を予め持った子孫からの胚の幹細胞を用いて、選択できる。トランスフォーメーション法の� ��を用い、そしてヒトの遺伝子座がランダムな仕方でヒトのゲノムに組込まれる場合には、合計8以上のトランスフォーメーションが要求される。
【0026】
不活性化の為には、その遺伝子座のイムノグロブリンのサブユニットの発現の阻害が生じる、標的遺伝子座にある、任意の損傷(lesion)が用いられる。かくて、この損傷は、V,J,C領域におけるエンハンサー、例えば5´又は3´のエンハンサー或いはイントロンを含む領域内とすることができ、重鎖の場合は、D領域又はその組み合わせにある。これらの操作については、転写の失敗或いはメッセージのプロセシングの失敗等の何らかの原因で、Igの生殖系列並べ換えが阻害されるか、内生のイムノグロブリンをコードする機能的なメッセージが生産できないかが、重� ��な要素である。このような損傷は、標的遺伝子の削除(deletion)、外来遺伝子の挿入、挿入或いは削除の組み合わせ、内生の遺伝子での削除の導入を伴った若しくは伴わない、異種の配列を用いた置換、の形態を取る。
【0027】
イムノグロブリンのサブユニットの遺伝子座を不活性化することに関心があるとき、損傷は、イムノグロブリンのサブユニットの遺伝子座、例えば定常領域又はJ領域の遺伝子座に含まれるエキソンの1以上に導入することが好ましい。このようにして、この領域に機能的なエキソンを欠くターゲティング構造が作られるが、このターゲティング構造は、J及び/又はC領域に隣接する配列、及びJ及び/又はC領域から上流及び/又は下流を含むか、或いはJ又はCエキソンに不活性化挿入(遺伝子) を有する全部又は部分の領域を含みうる。望ましくは、通常少なくともエキソン配列(シーケンス)の約75%が、好ましくは少なくとも約90%が削除される。
【0028】
望ましくは、マーカー遺伝子が、ターゲティング構造に使用され、削除された配列を置換する。種々のマーカーが、特には陽性の選択性を与えるものが、利用される。特に関心があるのは、ネオマイシンフォスフォトランスフェラーゼ("neo")に対する遺伝子の発現から生じる、G418耐性の利用である。
【0029】
ターゲティング構造において、標的遺伝子(ターゲットジーン)の上流及び/又は下流は、相同的二重交叉(a homologous double crossover)が生じたかどうか(ネガティブ選択)の識別を与える遺伝子とすることができる。この目的のために、ヘルペスシンプレックスウィルスのチミジンキナーゼ遺伝子が使用される。これは、チミジンキナーゼ遺伝子を発現する細胞は、機能的なHSV−tk(Mansour et al.
胞子の機能は何ですか?
, Nature 336:P348-352 (1988))を含む細胞の細胞毒作用により、アサイクロヴィル(acyclovir)やガンサイクロヴィル(gancyclovir)のような、ヌクレオシド類縁物の利用で殺されるからである。これらのヌクレオシドの類縁物に対する感受性の欠如は、HSV−チミジンキナーゼ遺伝子の欠如を示す。それ故に、相同組換えが生じた場合には二重交叉(double crossover)もまた生じたことを示す。
【0030】
ゲノムにおけるマーカー遺伝子の存在は、組込が起こったことを示すけれども、相同的組込が起こったかどうかを決めることが、なお必要である。これは、いくつかの方法によって達成できる。主として、サザンブロットハイブリダイゼーションによるDNAの分析は、統合の位置を規定するのに利用される。挿入のためのプローブ及び相同的組込が生じるだろう領域をフランキングする5'及び3'側での配列を使用することにより、相同的なターゲティングが起こったことを立証することができる。
【0031】
PCRはまた、相同組換えの存在を検出するのに有利に利用される。ターゲティング構造内の配列に相補的である、又は、この構造の外側若しくは標的遺伝子� �の配列に相補的であるPCRプライマーが、用いられる。この方法においては、相同組換えが起こった場合には、相補的な鎖(strands)に存在する両方のプライマーを有するDNA分子だけを獲得することができる。例えばサザンブロット分析を用いることにより、予測された大きさのフラグメントを立証することによって、相同組換えの発生を裏付けられる。
【0032】
ターゲッティング構造は、宿主細胞において機能する複製系を更に含む場合もある。主として、これらの複製系は、シミアン(Simian)ウィルス 40、エプスタイン−バーウィルス、ポリオーマウィルス、パピローマウィルスなどのようなウイルスの複製系を包含する。種々の転写開始システムは、ウイルス遺伝子由来からか、哺乳類の遺伝子由来からのどちらかが利用される。例えば、SV40、メタロチオネイン−I及びII遺伝子、β−アクチン遺伝子、アデノウイルスの初期遺伝子及び後期遺伝子、ホスフォグリセレートキナーゼ遺伝子、RNAポリメラーゼII遺伝子などである。プロモーターに加えて、野生型エンハンサーが、マーカー遺伝子の発現を更に強めるために、利用される場合もある。
【0033】
相同的組換えのためのターゲティング構造を調製するに際し、原核生物、特にE.coli(大腸菌)の複製系が、ターゲティング構造の調製、制限地図� ��は配列、所望の配列の増量及び単離のような、各操作後のサブクローニングのために含まれる場合もある。置換したい場合には、異種のDNA挿入部が長い場合には、一般には約50kbpより長く、通常は約100kbpより長く、更に通常は約1000kbpより長くない場合には、酵母の人工的染色体(YAC)がターゲティング構造のために利用される。
【0034】
一旦、ターゲティング構造が調製され、例えば原核の配列(procaryotic sequences)のようなあらゆる不所望な配列が除去されたなら、その構造は、ES細胞のような、標的細胞(ターゲットセル)内にすぐに導入される。標的細胞内へDNAを導入するために、あらゆる便利な技術が利用できる。その技術には、プロトプラスト融合(protoplast fusion)(の利用)が含まれる。例えば、酵母スフェロプラスト:細胞間の融合、リポフェクション(lipofection)、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム媒介DNAトランスファー(リン酸カルシウム法calcium phosphate-mediated DNA transfer)、直接顕微注射(微量注入)がある。
【0035】
標的細胞のトランスフォーメーション或いはトランスフェクション(transfection)の後、標的細胞は、先に指摘した、ネオマイシン耐性及びアサイクロヴィル耐性又はガンサイクロヴィル耐性のような、陽性マーカー及び/又は陰性マーカーによって選択される。所望のフェノタイプ(表現型)を示す細胞は、リストリクション分析(restriction analysis)、エレクトロポレーション、サザン分析、PCRなどにより更に分析される。標的遺伝子座に損傷の存在を示すフラグメントを識別することにより、相同組換えが起こり標的遺伝子座の複製が不活性化された細胞を識別することができる。
【0036】
上記の工程は、キメラな動物に発展する宿主の胞胚内へ細胞が顕微注射されることによって、胚の幹細胞におけるH鎖の遺伝子座を不活性化させるために、最初に行われる。次に、キメラな動物が異型接合の宿主を得るために育種(breed)される。異型接合の宿主を交配することにより、同型接合の宿主が得られる。或いはまた、胚の幹細胞を単離し、第二のIgHの遺伝子座を不活性化するために、トランスフォームされる。この工程は、所望の遺伝子座が全て不活性化され るまで繰り返される。もう一つの方法としては、L鎖の遺伝子座を最初に不活性化してもよい。L鎖のイムノグロブリンを生産するための能力を完全に除去するために、ラムダとカッパーの両方のL鎖のイムノグロブリンの遺伝子座を不活性にすることが望まれる。任意の段階で、異種の遺伝子座を挿入することができる。
【0037】
既に指摘したように、標的遺伝子座は、類似する(アナロガスな)異種の遺伝子座で置換される。この方法においては、遺伝子座の位置に関連するあらゆる制御が異種のイムノグロブリンの遺伝子座と実質的に同じとなるように、異種の遺伝子座は、類似する宿主の遺伝子座として実質上同じ領域に配置される。例えば、ヒトIgH遺伝子座の可変領域(V、D、J配列を含む)又はその部分を単 離し、そしてマウスの遺伝子座からの配列でヒト遺伝子座の配列をフランキングすることができ、この配列として、宿主の遺伝子座において、好ましくは少なくとも約5kbpまで、より好ましくは少なくとも約10kbpまでの配列とし、この領域に、組換え操作にて、ヒトのフラグメントを挿入でき、宿主のイムノグロブリンの遺伝子座の内生の可変領域を、ヒトのイムノグロブリンの遺伝子座に置換する。この方式において、宿主のエンハンサーによりヒトのイムノグロブリンの遺伝子座のプロモーターを活性化させる一方で、内生のイムノグロブリンのサブユニットを生産するための宿主の能力を害う(disrupt)。
【0038】
宿主において、異種の結合タンパクの生産を提供するために、宿主は、必要な酵素を供給する能力が あることが必要であって、更に他には、抗体の産生に与える因子(factors)が必要であるが、イムノグロブリンのH鎖とL鎖のサブユニットの発現の能力をもつ内生の遺伝子は欠如していなければならない。このように、それらの酵素、及び、生殖系列の並べ換え、スプライシング、体細胞突然変異などに関係する他の因子が、宿主内において機能する。欠如しているものは、内生のイムノグロブリンの生産に関係する種々のエキソンを含む機能的な天然の領域である。
【0039】
導入された異種のDNAの組込は、利用する特別な方針に依存してランダムとなるか又は相同性を示す。このように、トランスフォーメーションを用いることによって、又は、反復的な工程を用いることによって、或いは、交配と組合せることで、L鎖又 はH鎖の内生イムノグロブリンを実質的に欠如した、異種の結合タンパクを生産することができる、トランスジェニック動物が得られる。「トランスフォーメーション」の語により、生きている細胞にDNAを導入する、あらゆる技術が意図される。例えば、コンジュゲーション(conjugation)、PEG媒介細胞融合(PEG-mediated cell fusion)、トランスフォーメーション(遺伝子導入ないし形質転換)(transformation)、トランスフェクション(transfection)、トランスダクション(形質導入)(transduction)、エレクトロポレーション(electroporation)、リポフェクション(lipofection)、バイオリスティックス(biolistics)などである。
【0040】
一度、異種の遺伝子座が、相同組換え又はランダム組込のどちらか一方により、宿主のゲノムに導入されると、さらに、種々のトランスジェニック動物又はキメラな動物から誘導された動物を適当に交配することにより、不活性化された内生のイムノグロブリンの遺伝子座を有する宿主動物が生産されると、内生のイムノグロブリンを生産する元来の能力に欠けるが、異種源(xenogeneic source)のレパートリーの重要な部位を少なくとも有する、異種のイムノグロブリンを生産する能力を持った、宿主を生産することができる。
【0041】
3種の宿主のIg遺伝子座(H鎖、カッパー、ラムダ)のそれぞれについての二つのコピーは機能的に不活性化されると、次に、ヒトIgH及びヒトIgカッパー及び/又はラムダ遺伝子座を含む宿主は、宿主の抗体又は宿主/ヒトキメラの抗体を作ることなく、純粋なヒト抗体分子を生産することができる。このような宿主の株は、特異的抗原で免疫することにより、特異的ヒト抗体を生産するマウスのB細胞の生産で応答する。そしてそのB細胞は、マウスのミエローマ細胞と融合され、ヒトのモノクローナル抗体の生産を安定に継続するために他の方法で、不壊死化(immortal ize)される。継続的に安定したモノクローナル抗体の生産を獲得するための方法に関する技術は周知である。
【0042】
本発明の方法論及び方針は完全なイムノグロブリンを生産するのに、限定される必要はないが、定常領域の部分、例えばCH1、CH2、CH3又はCH4、又はこれらの組合せに結合される領域を提供するための機会を提供する。別法としては、CH、Ck、又はCT領域のエキソンの1以上が、異なったタンパクをコードする配列に置換されるか、結合される。そのようなタンパクとは、例えばプラスミノーゲンアクチベーター(plasminogen activator)、スーパーオキサイドディスムターゼ(superoxide dismutase)などの酵素、例えばリシン(ricin)、アブリン(abrin)、ジフテリア毒素(diphtheria toxin)などの毒素、成長因子、TNFのような細胞毒性薬剤、レセプターリガンド(receptor ligand)などである。例えば、WO89/07142;WO89/09344,WO88/03559が参照される。定常領域のエキソンに興味のタンパクを挿入することによって、又は、変性した定常領域のエキソンに対する可変領域のスプライシングを施すことによって、生じた結合タンパクは、イムノグロブリンとは異なったC−末端領域を持つ。挿入された遺伝子を有する終止配列(a stop sequence)を提供することにより、生成タンパクは、C−末端領域に挿入されたタンパクを持つ。もし所望するなら、可変領域に他のタンパクが結合するための適当なスプライシング部位を有する構造を提供することにより、定常領域は、完全に他のタンパクで置換される。
【0043】
イムノグロブリン或いはイムノグロブリン類似物を生産するトランスジェニックな宿主由来のB細胞は、ハイブリドーマを生産するためのマウスの骨髄性細胞との融合に利用される、或いは、他の便利な工程により不壊死化される。例えばガン遺伝子とのトランスフェクションである。これらの不壊死化された細胞は、継代培養で増殖させて、或いは、腹水症をつくるために適合性宿主(compatible host)の腹膜内へと挿入される。
【0044】
本発明は、ポリクローナル−ヒト−抗血清又はヒトのモノクローナル抗体又は抗体の類似物を提供する。哺乳類の宿主が、抗原で免疫されると、その結果生じたヒト抗体は、アフィニティーカラムの使用により、他のタンパク、プロテインAなどのようなFc結合半部分(moiety)を有するタンパクから分離することができる。
【0045】
発明は、次に示す、ヒト以外の宿主の実施態様を含む(図18参照)。
I.不活性な内生のL鎖イムノグロブリン遺伝子に対して異型接合の動物(同型接合の動物は近親交配(interbreeding)により得られる)。
II.不活性な内生のH鎖イムノグロブリン遺伝子に対して異型接合の動物(同型接合の動物は近親交配により得られる)。
III.� ��能的な内生のL鎖とH鎖のイムノグロブリン遺伝子に対して同型接合で、外来遺伝子(即ち、一つのコピーを含む)、好ましくはヒト、H鎖イムノグロブリン遺伝子に対して半接合の動物(同型接合の動物は近親交配により得られる)。
IV.機能的な内生のL鎖とH鎖のイムノグロブリン遺伝子に対して同型接合で、外来遺伝子、好ましくはヒト、L鎖イムノグロブリン遺伝子に対して半接合の動物(同型接合の動物は近親交配により得られる)。
V.カテゴリーIの動物をカテゴリーIIからの動物と雑種形成すること(crossbreeding)により得られる、不活性な内生のH鎖及びL鎖のイムノグロブリン遺伝子に対して異型接合の動物(同型接合の動物は近親交配により得られる)。
VI.不活性な内生のH鎖及びL鎖のイムノグロブリ� �遺伝子に対して異型接合で、カテゴリーIIIの動物をカテゴリーVからの動物と雑種形成することにより得られる、外来遺伝子、好ましくはヒト、H鎖イムノグロブリン遺伝子に対して、半接合の動物(不活性な内生の遺伝子座に対して同型接合で、外来遺伝子に対して同型又は異型である動物は、近親交配により得られる)。
VII.不活性な内生のH鎖及びL鎖のイムノグロブリン遺伝子に対して異型接合で、カテゴリーIVの動物をカテゴリーVからの動物と雑種形成することにより得られる、外来遺伝子、好ましくはヒト、L鎖イムノグロブリン遺伝子に対して、半接合の動物(不活性な内生の遺伝子座に対して同型接合で、外来遺伝子に対して同型又は異型である動物は、近親交配により得られる)。
VIII.不活性な内生のH鎖及びL 鎖のイムノグロブリン遺伝子に対して同型接合であるか、又は異型接合であって、カテゴリーVIとVIIの動物を雑種形成することにより得られる、外来遺伝子、好ましくは、ヒトL鎖及びH鎖のイムノグロブリン遺伝子に対して、半接合である動物(不活性な内生の遺伝子座に対して同型接合で、外来遺伝子に対して同型又は半接合である動物は、近親交配により得られる)。
好ましい実施態様では、カテゴリーVIIIの同型接合の動物がヒトの抗体の生産に使用される。
IX.機能的な内生のH鎖及びL鎖のイムノグロブリン遺伝子に対して同型接合で、カテゴリーIIIとIVの動物を雑種形成することにより得られる、外来遺伝子、好ましくは、ヒトH鎖及びL鎖のイムノグロブリン遺伝子に対して、半接合である動物(同型接合の動物は近� �交配により得られる)。
X.不活性な内生のH鎖のイムノグロブリン遺伝子に対して異型接合で、カテゴリーIIとIXの動物を雑種形成することにより得られる、外来遺伝子、好ましくは、ヒトH鎖及びL鎖のイムノグロブリン遺伝子に対して、半接合である動物(不活性な内生の遺伝子座に対して同型接合で、外来遺伝子に対して同型又は半接合である動物は、近親交配により得られる)。
XI.不活性な内生のL鎖のイムノグロブリン遺伝子に対して異型接合で、カテゴリーIとIXの動物を雑種形成することにより得られる、外来遺伝子、好ましくは、ヒトH鎖及びL鎖のイムノグロブリン遺伝子に対して、半接合である動物(不活性な内生の遺伝子座に対して同型接合で、外来遺伝子に対して同型又は半接合である動物は、近親交配に� ��り得られる)。
【0046】
本発明は、また、ヒト以外の、例えば、ホ乳類の宿主への、大きな連続的な、異種のDNAシーケンスを導入する方法を提供する。通常、導入シーケンスは、少くとも100kbであろうし、より普通には約200kb、一般的には約200〜1000kbに亘る。かくて、関心のある遺伝子座、例えば、イムノグロブリン座、T-セル受容体座、主要組織適合性座、異種染色体座、等で、目的とする1又は複数の遺伝子を含み得、また、下記の如く特性付けられていてもいなくてもよい。即ち、これらには、例えば、低密度リポプロテイン(LDL)受容体、アポリポプロテイン(Apo)B, ApoE、システィックフィブロシストランス膜、コンダクターレギュレーター、ディストロフィン、又は、部分染色体トリソミー(例えば染色体21, 7, 10)に関わりうる異種染色体の領域;及びウイルスなどがある。DNAとしては、野性型又は優勢突然変位を創出したり、相補的な劣勢突然変位をつくったりして多種の病気を研究するための、欠陥性(defective)遺伝子とであってもよい。後者としては、例えば、LDL受容体及びApoβ遺伝子をハイパーコレステロレミア、ハイパーリポプロテレネシア、アテロスクレロシスの研究のため導入でき、また因子VII又はIXは、ヘモフィリアのため、システィックフィブロシストランス膜伝達レギュレータは、システィックフィブロシスのため、さらに、ジィストロフィン遺伝子は筋ジストロフィのために、導入できる。YACを用いて導入されるべき異種DNAは、ホ乳類ソースからのもので、特に、霊長類より特別にはヒト、他の脊椎又は無脊椎動物等でありう� ��。かくて、宿主に対して多くの新しい能力を与えることができ、DNAの異種源に関係する遺伝子的応答を創出することができ、また抗体の生産、転写ファクターの特異(Specific)な組合せの提供、メタボリックシステムの提供、優勢又は対応する劣勢突然変位の導入等が可能となる。異種DNAは、YAC内にあるとき修飾されうる。酵母の中では相同組換えが、有効であり、相同DNAの座−特異性の組込高率で生じる相同のDNAが他の関心あるDNAをフランク(flank)し、かくて、ESセルに異種DNAを導入する前にそれを修飾することができる。このようにして、欠陥遺伝子を宿主に導入でき、その宿主は、その欠陥遺伝子を発現して、異種宿主が病状となった状態を擬することができ、欠陥プロテインの他の異種プロテイン又は外来性プロテインとの相互� �応の様々なメカニズムを研究でき、また、遺伝子又は遺伝システムを研究できる。
【0047】
一般的に、大きなDNAセグメントを、本願に詳細に記す如く、移す(ないし導入、transfer)ためには、YACs((注)YACの複数形はYACsと表わす、他の略号についても、以下同じ)を用い、YACsとしては、酵母のセントロミア(動原体CEN)、即ち、複製のオリジン、及び目的DNAを結合するテロメア(末端小粒TEL)を含む多種のセントロミア、テロミアを用いることができ、殊に、酵母染色体4及び5から1セントロミアがよい。YACは、それが統合(組込)されるセルの選別ないしスクリーニングをさせるためのマーカーを有する。必ずしも全てのマーカーが効果的な選別を行う訳ではない。特に、HPRT遺伝子、より好ましくは、ヒトHPRT、がYACを有� ��るHPRT-欠失ESセルの効果的選別を可能とすることが判った。その他の判っている選別ないしスクリーニング可能なマーカーとしては、ヒグロマイシン、ネオマイシン、β-gal, GPTがある。ESセルは、ESセルを取出すことができる、ヒト以外の任意の宿主から導くことができ、それは、培養で増殖でき、生存可能性かつ機能性を維持し、それに対しての選別マーカーが存在し、そして、ESセルが胚内に導入できる場合には、宿主を生殖系列を含んで、増殖(repopulate)できるこれらの能力の大部分は、例えばマウス、ラットなどのげっ歯目により、樹立されており、やや程度は低いが、ギニア豚でも樹立されている。マウスは、不壊死化(immortalization)のために抗体又はβ-リンホサイトの生産のために用いられている。マウスは、取扱いが容易なため、大量生産でき、広汎な免疫レパートリをもつことが知られており、マウスが通常、選択されよう。ESセルの他の種類のものが、利用可能になれば、それらは当然本発明に� ��って採用できる。特に関心があるのは、実験小動物ないしドメスティックな動物で、特に、マウス、ラットを含むげっ歯目、兎、牛、豚、ハムスター、馬、犬、羊、ギニヤ豚、或いは、ニワトリ、七面鳥等の鳥である。ESセルは、一つ又は複数の突然変異を有するものとでき、例えば、特定の能力を欠くようにできる。さらに、ある種の受精卵は本発明で利用できよう。
【0048】
YACは、現在のヒトYACライブラリーの標準的手法を用いたスクリーニングにより得ることができ、それには、Centre d'Etude du Polymorphisme Human (C.E.P.H.)パロ(仏)及びWashington Univ. St. Sous. MO(米)がある。或いは、YACは、本願に詳述する通り、容易に調製できる。即ち、それは、一方のアームにセントロミアとテロミアを備え、他方のアームにテロミアを備えた酵母のフランキングセグメントを、目的DNAと結合させることにより得られる。通例、酵母の宿主セルを選別することができる一つ又は複数のマーカーがある。酵母選別には、特に、酵母宿主の突然変異と相補性を有する(complement)マーカーがよく、かかるマーカーとしては、YAC上でアミノ酸、プリンないしピリミジン、URA3, TRP1, LYS2, ADE2の生産に関与して、宿主中でのura3, trp1, Cys2及びAde2突然変異と相補性を有する遺伝子などがある。相補性(complementation)を与えるため、大抵は、全体のYACを持った酵母のみが選択性媒体(培養基medium)中で生存できるだろう。YACの両アームが保持されたことの遺伝的な検証に加え、パルスフィールドゲル電気泳動などの方法を用いて、YACの完全性ないし統体性(integrity)を確認することが望まれる。
【0049】
YACをもつこれらの酵母宿主は、次いで、ESセル内への導入のためのYACの源として用いることができる。YACの導入(transfer)は、従来法に従った酵母のスフェロプラストを調製することによって、効果的に行うことができる。外壁を、温和な条件下に、等張媒体中にて変性して、スフェロプラストを高率で生産できる。エクスポネンシャルに増殖するESセルは、プロテ� �ーゼ処理(例えばトリプシン処理)を施し、スフェロプラストと結合させる。好都合にも、酵母スフェロプラストをペレット化でき、ESセルをペレットでスピン(spin)し、PEG等の融合処理剤(fusogenic agent)に1〜2分間さらす。セルは次いで再懸濁(分散)され、適当な血清フリー媒体中でインキュベート(熟成)される。セルは、次いでフィーダーセル上にプレート化され、選択性マーカーによって選別に供される。HPRT遺伝子のためには、選別のためHAT媒体を用いることができる。生存している融合コロニーを、次いで、ピックして取出し、増殖し、分析する。
【0050】
分析は、制限酵素分析をサザンブロット法又はパルスフィールドゲル電気泳動法と組合せて行うか、又はPCR法により、少なくとも一つはDNAインサートと相補的であり、ヒトDNAシーケンスの検出のため、Aluのように異種DNA内に存在する反復シーケンスでプローブされた適当なプライアーを用いて行うことができる。
【0051】
Ty,Y< sup>1,rDNA、デルタシーケンスは酵母シーケンスのプローブとして用いられる。YAC末端のプローブは、YACのインテグリティを確認するために用いられる。宿主ゲノム内に統合(組込)された完全な(ないしは実質的に完全な)YACDNAを示すセルは次いで以降のステップで用いられる。あるクローンによっては、酵母DNAの僅か一部のみか、ほとんど又は全く何もマウスの遺伝子中に組込まれないものがある。統合(組込)された酵母DNAは、オリジナル酵母ゲノム約90%から、約10%未満にまでに亘る。
【0052】
好適な実施態様において、ヒト以外のトランスジェニック宿主の効果的な生産は、大きな、(少くとも100kb)異種DNA断片を、実質的に完全な形で、宿主の胚性幹細胞(ESセル)又は受精卵(zygote)へと統合� ��組込)することができる方法を用いて行う。異種DNAの導入は、一つの方法としてはESセルを酵母スフェロプラストと融合して効率的にできるが、この際、スフェロプラストは、100kbDNAを含むYACsと選択マーカーを含み、マーカーを含むYACDNAがESセルゲノムに組込まれるような条件下にて行う。他の方法としては、精製YACをESセルへ遺伝子導入(トランスフェクト transfect 即ち外来性遺伝子の導入)することによって行う。ゲノムへと組込まれたYACを含むESセルは、次いでESセル中で機能性であるマーカーにより選別される。例えば、ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)遺伝子をHPRT欠損ESセル(即ちHPRT-ESセル)内で用いることができる。遺伝子導入組込(transformation)胚幹細胞から動物を産生させるには、セルは、適当な媒体中(例えば牛胎児血清インハンスドDMEM)でフィーダー層の上へプレートできる。ESセルは、単一のターゲティング座(targeted locus)(異型接合の場合)をもつものでよく、或いは、ホモジェノタイゼーション法によって双方の座をターゲティングしたもの(同型接合)でもよい。ホモジェノタイゼーション(同型接合体の形成)は、両方の染色体に遺伝子ターゲティング事象を有するセルを成長させるための選択的圧力を用いる。2つのターゲティングされた対立遺伝子を有するセルは、選択性媒体を用い、コロニーが成長するに十分な時間の後、検出することができる。そのためコロニーは、ピックし、分析して、統合(組込)又は相同組換えが生じているかどうか分析される。既述の通り、PCRをプライマーと共に、構成(骨格)シーケンスの中又は外で、しかし標的部位に対し、用いることができる。
【0053】
相同の組換えを示すコロニーは、次いで 胚操作と胞胚への注入のために用いることができる。選別されたESセルは、その後、微量注入法その他の方法により胚内に導入される。例えば、マウス(murine)の胞胚は雌から排卵の3、5日後子宮をフラッシュして得られる。修飾ESセルは次いでトリプシナイズし、少なくとも1以上、15までのセルを胞胚の胞胚腔内へと注入する。注入の後、1以上約10までの胞胚を偽性受胎の雌の各子宮角部に戻す。雌は満期まで進行させ、生成するキメラ動物を分析してその体性セル内にYACがあるか否かを調べる。「キメラ」の語は、1つより多くのソース(例えば、宿主と他の動物)から導かれた細胞をもつ動物を意味する。例えば本発明では、キメラネズミ動物は遺伝子工学的に処理した修飾、特にヒト遺伝子を、そのいくつかのセル(例えば� ��修飾された胚幹セルから発達(展開)するセル)中に、有する。産出されたキメラ宿主内にある組込YACの存否を次に分析する。キメラ宿主は、交配によりESセルゲノムの生殖系列での遺伝、受継(transmission)を評価し、例えばキメラマウスをC57BL/6Jマウスと交配させる。キメラ宿主は非キメラ宿主と同型(syngenetic)又は同種異型(allogeneic)に交配させることができ、それにより、YACをその生殖セルにもつキメラをスクリーンする。遺伝子修飾について異種接合な子孫は、次いで互いにかけ合わされ(interbreed)、修飾に関して同型接合な子孫で、機能性のYAC構成をその子孫へ安定して伝えるものをつくる。
【0054】
異種DNAの大きなセグメントをヒト以外の宿主(特にげっ歯目、そして通例にはマウス(murine)動物)へ導入するための方法としては、DNAの安定な統合(組込)をもたらす。挿入された遺伝子は、機能を有することが認められ、結集するキメラ宿主は、組込DNAの生殖系列への遺伝を達成することができる。キメラ宿主の交配(breed)の後、トランスジェニックな異種接合の宿主が産生され、さらに多くの目的のために用いることができる同型接合の動物を産生するために交配(mate)される。この目的としては、産物の生産、例えば、結合蛋白、例えばイムノグロブリン、多くの薬剤のスクリーン、遺伝子治療、種々の病気の研究、不十分にマップ化された巨大なDNAフラグメントの機能と制御の研究などの目的があ る。
以下の実施例は、説明の手段としてのみ提供されるものであって、限定のためにあるのではない。
【0055】
実験
実施例I
I.マウスの重鎖J(JH)遺伝子の不活性化
A.標的にしている不活性化ベクターの形成(construction)
マウスの重鎖J遺伝子及びフランキング(flanking)配列を含んでいる、6.4kbのEcoRIフラグメントが、Sakano et al. (1981), Nature 290:562-565に記載されたプローブを用いて、Balb/c マウスの胚の遺伝子ライブラリーからクローン化される。このフラグメント(mDJ)がEcoRI−切断(digested)pUC19プラスミド(pmDJ)内に挿入される。4個のJ遺伝子を含む2.9kbのフラグメントが、XhoI−ScaIダイジェスチョン(digestion)(pmDδJNeo、図1参照)により切り出される。Herpes simplex virus のチミジンキナーゼ遺伝子(HSV−tk)のプロモーター及びポリオーマのエンハンサーにより駆動されるネオマイシン抵抗性(neomycin-resistance)遺伝子を含む、1150 bpXhol−BamHIフラグメントが、pMClNeo(Thomas and Capecchi (1987), Cell, 51, 503-512)から単離される。BamHI末端をScaI末端に変換するために、合成のアダプター(adaptor)がこのフラグメントの上に加えられる。結果として生じたフラグメントは、ネオマイシンの5´から3´までの配向(orientation)及び重鎖のプロモーターが同一である不活性化ベクター(pmDδJ.Neo)を形成するために、XhoI−ScaI pmDδJに結合される。このプラスミドは、ES細胞にトランスフェクションする前に、NdeIダイジェスチョンによって線状化される。相同的組換えのeventを駆動している配列は、ネオマイシン遺伝子の5´及び3´にそれぞれ配座された、3kb及び0.5kbのフラグメントである。
【0056】
B.培養、電気泳動、及びES細胞の選択性
ES細胞系列E14TG2a(Hooper et al. (1987), Nature, 326:292-295)が、基本的には(Doetschman et al. (1985), J. Embryol. Exp. Morphol. 87:27-45)の記載に従って、初期胚の繊維芽細胞−支持層(fibroblast-feeder layers)を処理したマイトマイシン(mitomycin)で培養される。胚の繊維芽細胞は、ネオマイシンのトランスジーン(transgene)(Gossler et al. (1986), PNAS 83:9065-9069)に対して相同の雄と交配され、14〜17日未満のC57BL/6雌からの胚から調製される。これらの細胞は、G418を含む培養基で成長することができる。エレクトロポレーション(電気穿孔法)の条件は、(Boggs et al. (1986), Ex. Hematol.
何ですか
(NY) 149:988-994)の記載に従った。ES細胞はトリプシン処理され、4×107/mLの濃度で、培養基中に再懸濁され、第一の実験では、12nMの濃度の標的DNA構造物(construct)の存在下でエレクトロポレートされ、第二の実験では、5nMのDNA濃度でエレクトロポレートされる。5mmの長さで、断面積が100mm2のエレクトロポレーションセルでは、150−250μFの静電容量で300Vの電圧が、最適であることがわかる。5×106個のエレクトロポレートセルが、15%の胎児牛血清(FBS)及び0.1mM2−メルカプトエタノールが補充された、Dullbecco's変性Eagle's培養基(DMEM)の存在下で、(径)100mmの皿で、マイトマイシン処理繊維芽細胞の上で平板培養される。エレクトロポレーションの後に、� �養基は200μg/mLのG418を含む培養基に24時間置換される。
【0057】
エレクトロポレーションから10−14日後に生じたコロニーは、PCR分析用にキャピラリーピペットで吸い出される。それぞれの吸い出されたコロニーの半量は、マイトマイシン処理支持細胞(mitomycin-treated feeder cells)が既に撒かれた24穴プレートに保存される。残りの半量は、3−4のプールに分け、約0.5mLのPBSを含むエッペンドルフチューブに移され、PCRによる相同的組換えが分析される。PCR反応の条件は、基本的には(Kim and Smithies (1988), Nucleic Acids Res. 16:8887-8893)の記載に従う。ペレット化した後、ES細胞は5μLのPBSで再懸濁し、各チューブに55μLの水を添加して溶菌させる。各チューブを95℃で10分間加熱することによって、DNAアーゼが不活性化される。プロテイナーゼKで55℃、30分間処理した後、PCRバッファー:1.5μgの各プライマー、3UのTaqポリメラーゼ、10%のDMSO、0.2mMの各dNTP を含む20μLの反応混合液が入っているチューブに、溶解液の30μLをそれぞれ移す。PCR展開(PCR expansion)は、サーモサイクラー(thermocycler)を用いて、92℃で65秒間融解し、65℃で10分間のアニーリングとエクステンションタイム(extension time)を、55サイクル行う。二つのプライム化したオリゴヌクレオチドは、TGGCGGACCGCTATCCCCCAGGAC(配列番号:1)とTAGCCTGGGTCCCTCCTTAC(配列番号:2)であり、それは、それぞれネオマイシン遺伝子の開始コドンの3´側の650塩基とマウスの重鎖遺伝子に位置する配列で、挿入部位の3´側の1100塩基に相当する。反応混合液の20μLをアガロースゲルで電気泳動し、ナイロン膜(ゼータ結合)に転写した。フィルターは、32P−標識した、J−C領域の991bpのXbaIフラグメントで検査される。
【0058】
実施例II
II.ES細胞における、マウスのIg重鎖J(JH)遺伝子の削除(deletion)
A.組換ターゲティングベクターの形成(Construction of the replacement targeting vector)
マウスのイムノグロブリンの重鎖のJ領域の遺伝子及びフランキング(flanking)配列を含み、Balb/c マウスの胚の遺伝子ライブラリーからクローン化され、pUC18(pJH)に挿入された、6.4kbのEcoRIフラグメントは、4個のJ遺伝子を含む約2.3kbのフラグメントを削除するために、XhoI及びNaeIで切断された(図2A参照)。BamHI部位でブラントされ(blunted)、Herpes simplex virus のチミジンキナーゼ遺伝子(HSV−tk)のプロモーター及びポリオーマのエンハンサーにより駆動されるネオマイシン抵抗性遺伝子を含む、約1.1kbのフラグメントが、pMClNeo(Thomas and Capecchi (1987), Cell, 51, 503-512)から単離された。このフラグメントは、削除ベクター(pmHδJ、図2B参照)を形成するために、pJHが削除されたXhoI−NaeIに挿入された。削除ベクターでは、ネオマイシン及び重鎖の遺伝子の転写の配向(transcriptional orientation)は同じである。このプラスミドは、ES細胞にトランスフェクションする前に、NdeIダイジェスチョンによって線状化された。相同組換えを駆動している配列は、それぞれネオマイシン遺伝子の5´側と3´側に位置する、約2.8kbと1.1kbのフラグメントである。
【0059】
B.ES細胞の培養、エレクトロポレーション、選択
ES細胞系列E14TG2a(Koller and Smithies (1989), PNAS USA, 86:8932-8935)は、(Koller and Smithies (1989), PNAS USA, 86:8932-8935)の記載に従って、胚の繊維芽細胞支持層(fibroblast feeder layers)が処理されたマイトマイシンCで培養された。ES細胞はトリプシン処理され、HBSバッファー(pH7.05; 137mM NaCl, 5mM KCl, 2mM CaCl2, 0.7mM Na2HPO4, 21mM HEPES pH7.1)で、2×107/mLの濃度に再懸濁された。線状化された不活性化ベクターの50μg/mLの存在下で、エレクトロポレートされた。エレクトロポレーションは、240ボルト、静電容量500μFを用い、BioRad Gene Pulserで行われた。5×106のエレクトロポレートされた細胞は、15%胎児牛血清及び0.1mM 2−メルカプトエタノールを補充した、Dulbecco's modified Eagle's media(DMEM)の存在下で、100mmの皿に、繊維芽細胞処理されたマイトマイシンCの上に置かれた。培養基は、エレクトロポレーションの24時間後に、200μg/mLのG418を含む培養基に置換された。エレクトロポレーションから12−14日後に、成長して生じたG418−抵抗性ESコロニーは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を利用した分析のために、キャピラリーピペットで吸い出された。吸い出されたコロニーの半量は、既に支持細胞で処理されたマイトマイシンCが入った、24穴プレートの個々の穴に入れられた。残りの半量は、4つのプールに分けられ、0.3mLのPBSを含むエッペンドルフチューブに移され、細胞の溶解液はPCR分析用に、 Joyner et al (1989) Nature, 338: 153-155の記載に従って、調製された。PCR反応には、5−20μLの細胞溶解液、1μMの各プライマー、1.5UのTaqポリメラーゼ、200μMのdNTPsを使用した。PCRの増幅は、94℃で1分融解、55℃で2分アニーリング、72℃で3分エクステンションを、サーマルサイクラー(Perkin-Elmer Cetus社製)を用いて、45サイクル行った。二つのプライミングオリゴヌクレオチドは、ACGGTATCGCCGCTCCCGAT(配列番号:3)及びAGTCACTGTAAAGACTTCGGGTA(配列番号:4)であって、それはそれぞれ、ネオマイシン遺伝子のBamHI断片の5´側の約120塩基及びマウスの重鎖の遺伝子に配置された配列で、挿入部位の3´側の約160塩基に相当する。成功した相同組換えは、約1.4kbフラグメントを生ぜしめる。反応混合液の20μLが、1%アガロースゲル上で電気泳動され、エチジウムブロマイド(ethidium bromide)で染色され、ナイロン膜に転写される(遺伝子のスクリーン)。マウスの重鎖の挿入部位の3´側に配置される32P−標識EcoRI−PstIの約1.4kbフラグメントで、探索された(図2参照)。更なる分析のために、ゲノムDNAがES細胞から調製され、製造者により推薦された制限酵素で切断された。フラグメントは、1%アガロースゲルで、分離された。DNAはナイロン膜に転写され(遺伝子のスクリーン)、上述の様にして、32P−標識されたフラグメントで探索された。
【0060】
C.G418−耐性ESコロニーの分析
最初の実験において、プールされたコロニーのPCR分析により、136のG418−耐性コロニーを表している34のプールから、予想された大きさ(約1.4kb)の一つ の陽性PCRシグナルが検出された。この陽性プールに貢献した4つの別個のコロニーが、別々にPCRにより分析され、陽性クローン、ES33D5が確認された。第2の実験においては、540のG418−耐性コロニーについて同様の分析により、産生された4つの付加的な陽性クローン(ES41−1、ES61−1、ES65−1、ES110−1)を得た。
J遺伝子の一つのコピー(遺伝子は常染色体であり、2つのコピーがある)の標的ディスラプション(乱れないし異常)を立証するために、PCR陽性クローンが増殖され(expanded)、ゲノムDNAが調製され、HindIII或いはSacIで切断され、EcoRI−PstIプローブを用いる上記の様なサザン分析により分析された。
【0061】
相同的組換� �によるネオマイシン遺伝子の挿入によって、J遺伝子の置換が、EcoRI−PstIプローブで検出可能な、HindIIIフラグメントに生じる。それは、天然の遺伝子座における同等のフラグメントより長い約1.9kbであり、削除されたJ遺伝子領域に配座された2つのHindIII片の損失による(図2C参照)。HindIIIの切断による5個の陽性クローンのそれぞれのサザン分析は、重鎖J遺伝子の二つのコピーの一つはディステプトされた事を示すパターンを与えた。3個の標識されたフラグメントが検出された。:一つのフラグメント(約760bp)は、同じ強度(intensity)で未処理の細胞に存在するのと同一の大きさであり、一つのフラグメント(約2.3kb)は、未処理の細胞に存在するのと同一の大きさであるが 、PCR陽性クローンの強度は減少しており、約4.2kbの付加的なフラグメントは、相同組換えで予測された大きさであり、PCR陽性クローンにのみ存在する。同様に、相同組換えによるネオマイシン遺伝子でのJ遺伝子の置換は、1個のSacI片の損失及びEcoRI−PstIプローブで検出可能な、フラグメントの出現が生じる。そしてそれは、自然の遺伝子座での同等のフラグメントより小さい570bpである(図2C参照)。SacI切断(digestion)によるクローンのサザン分析は、1個の天然物と1個の標的対立遺伝子の予想されたパターンを与えた。:(一つは)約4.0kbフラグメントで、未処理細胞で検出されたものと同一の大きさであるが、5個の陽性クローンより強度は減少している。そして、約3.4 kbの付加的フラグメントは、標的にされた相同的組換えで予想された大きさであり、確認されたクローンにのみ存在する。ネオマイシン遺伝子に対するプローブでのサザンブロットのリハイブリッド化(rehybridization)は、HindIIIとSacIの切断(digestion)から生じ、ターゲティング(targeting event)により予測されたようなプローブにハイブリッドされた、4.2kbと3.4kbのフラグメントだけを示した。
【0062】
D.JHが欠失したキメラなマウスの産生
Koller, et al. 1989 (supra)によって記載された様な、4−5週令の排卵過度の雌から、3.5日目のC57BL/6J(Jackson Laboratories, Bar Harbor, ME)の胞胚が得られた。ES細胞はトリプシン処理され、新鮮なDMEM培養基で1回洗浄し、10%胎児牛血清、20mM HEPES、pH7.5を含むDMEM培養基で、約1×106/mLに希釈された。10から15の細胞が、各胞胚の胞胚腔に注入された。次に、胞胚を含むES細胞は、C57BL/6J×DBA/2又はC57BL/6J×CBAのF1世代の偽性妊娠の雌の一つの子宮の角部(horn)に外科的に移された。
ES細胞の子孫への貢献は、子供の皮の色(coat color)の試験によって、目視的に判断された。C57BL/6Jマウスは濃い黒色である。ES細胞の親系列(parent line)のE14TG2aは、129/Olaの胚から単離された。それは、アグーチの遺伝子座に優性なAw対立遺伝子、p遺伝子座には劣性なピンクの目を薄くする(pink-eyes-dilute)対立遺伝子、c遺伝子座には劣性なCch対立遺伝子の、3個の皮の色の遺伝子を持つ。動物の形成にES細胞が関与したキメラな子孫は、アグーチでクリーム色の毛の皮を持つ。
【0063】
キメラなマウスの生殖系列の遺伝の能力は、C57BL/6Jマウスと交配することで、アグーチ色を持つF1子孫を与えることにより評価された。これらのアグーチマウスの50%は、変異した重鎖の対立遺伝子を遺伝することが期待され、そのことは、尾から単離されたDNAのサザンブロット分析により確認することができる。
ターゲティングにされた� ��targeted)重鎖対立遺伝子の一つを持つ、JH−ターゲティングES細胞系列のES65−1は、C57BL/6Jマウスの胞胚の中に注射された。生存している子供の約45%はキメラであった。238−2と244−3の、C57BL/6Jの雄と交配させた、2匹のキメラな雌は、アグーチの子孫の比率でいうと、100%及び15%の頻度で、生殖系列が遺伝した子孫を産んだ。相同的な子孫からのDNAのサウザンブロット分析は、テストした5匹のアグーチ子孫の中2匹には、1個の対立遺伝子に加えて、ターゲティング重鎖が存在することを示した。
突然変異のためのマウスの相同性は、JHが削除された(δJH)異型接合体として識別された雄と雌のマウスを交雑することによって、獲得された。� �れらの交配の子孫は、サウザンブロット分析により、2個の標的重鎖対立遺伝子の存在が調べられた。
【0064】
E.キメラマウス由来のB細胞の分析
H領域の削除が、重鎖の遺伝子座を不活性化するのに十分であるなら、IgM−発現B細胞の発達及び抗体の産生を完全に阻害するにちがいない。JH遺伝子座が異型接合であるマウスは、C57BL/6Jから誘導される、1個の完全な機能的重鎖対立遺伝子及び、ES細胞(129/Ola strain)から誘導されるJH−削除重鎖対立遺伝子(JH-deleted heavy chain allele)とを持つ。129株とB6株では、Igの重鎖のアロタイプが異なる。Bを発現している抗体についてフローサイトメトリー法(flow cytometry analysis)を用いて、アロタイプ特異的モノクローナル抗体でもって、ES−誘導B細胞(IgMaアロタイプ)は、B6−誘導B細胞(IgMbアロタイプ)とは識別することができる。
【0065】
これらの抗体の特異性は、図3(A−C)に示される。末梢血のリンパ球は、B細胞に特異的なマーカー、B220に対する抗体、及び、IgMアロタイプに対する抗体で、染色された。C57BL/6Jマウス由来のB細胞は、IgMbアロタイプに対する抗体で染色されたが、IgMaアロタイプに対する抗体では染色されなかった(図3B)。129/Olaマウスから誘導されたB細胞は、IgMaアロタイプに対する抗体で染色されたが、IgMbアロタイプに対する抗体では染色されなかった(図3A)。1個の完全なES−誘� ��重鎖対立遺伝子及び1個の完全なC57BL/6J−誘導重鎖対立遺伝子を持つ、異型接合体(a/b F1)マウスにおいては、両方のアロタイプが、等量存在する(図3C)。
【0066】
H削除重鎖対立遺伝子は129/Olaの親からであった場合に、JH削除のために異型接合であるマウス由来のB細胞を分析したなら、IgMaアロタイプに対して陽性を示す細胞はなかった。全てのB細胞は、完全なC57BL/6J重鎖対立遺伝子由来のIgMbに対して陽性であった(図3D)。これらの結果は、JH削除重鎖の遺伝子座が不活性化され、機能的なIgM抗体をコードすることができないことを示した。JH削除の為に同型接合であるマウスもまた、機能的な抗体を産生するための能力について分析された。同型接合の突然変異マウスからの末梢血のリンパ球が、B細胞に特 異的なマーカーであるB220を用い、アロタイプ特異的マーカーと共に、フローサイトメトリーにより分析された(図4参照)。対照マウス(図4D−F)に比して、突然変異マウスでは、B220+細胞は検出されず、IgM産生細胞が検出された(図4A−C)。更には、突然変異マウスは、血清中に検出可能なIgMを持たない。これらの結果は、二つの重鎖の対立遺伝子からJH領域を削除することが、成熟B細胞へのB細胞の発達及び抗体の産生の完全なる阻害を導く。
【0067】
F.同型接合の突然変異ES細胞の発生
B細胞におけるJH削除の効果は、二つの重鎖の対立遺伝子を持つES細胞を生み出すことによってもまた分析することができ、そのES細胞は、突然変異により多くのリンパ系細胞の同� �接合体を含むキメラなマウスを生産するために利用される。
同型接合のδJH突然変異ES細胞は、標的対立遺伝子のホモゲノート化(homogenotization)に選択性を示すG418のレベル(1.4mg/mL)まで異型接合の突然変異ESクローンα、ES110−1の1個を処理することによって、生み出された。野生型の重鎖対立遺伝子を喪失し、更に第二の標的対立遺伝子を獲得したものを目的として、7個の生きているコロニーが、SacI断片を用いて、サザンブロット分析によりスクリーニングされた。3個のクローンの中の1個、ESDK207は、親系列ES110−1のように、約80%の細胞は、二つの標的対立遺伝子が存在することを示唆する、40個の染色体を持つことを示した。同型接合の突然変異ES� �胞は、C57BL/6Jの胞胚に顕微注射されて、キメラなマウスが生まれた。
【0068】
G.同型接合のキメラ由来のB細胞の分析
キメラなマウス由来のB細胞が、B細胞の発達及び抗体産生におけるJHの削除の効果を決定するために分析された。ES細胞系列(129/Ola)由来のリンパ球は、129由来のリンパ球を見つけるがB6由来のリンパ球を見つけない、Ly−9.1マーカーに対するモノクローナル抗体によって、胞胚−誘導(C57BL/6J)リンパ球とは識別し得る。更に、二つの細胞株は、既に述べたように、IgMアロタイプが異なる。
分析されたキメラは、野生型E14TG2aのES細胞、又は、標的のJH領域で、異型接合体(ES110−1、ES65−1)であ� ��か、同型接合体(ESDK207)である、ES細胞から誘導された。末梢血の単核細胞が、B細胞に特異的なマーカーB220に対する抗体、及び、Ly9.1或いはIgMアロタイプのどちらかに対する抗体でもって、染色された。次いで、2色のフローサイトメトリーにより分析された。T細胞の直系におけるキメラ現象を評価するために、細胞が、T細胞のマーカーThy1.2に対する抗体及び抗−Ly−9.1抗体でもって、染色された。親のマウスの株に由来する細胞の染色は、アッセイの特異性及び選択性のコントロール(対照)とした。
【0069】
キメラ現象が同程度のマウスは、皮の色(coat color)により判断されるのだが、比較された。ES−誘導B細胞とT細胞は、野生型のE14TG2aのES細胞から発生したキメラなマウスの末梢血で検出され、この細胞系列における、インビボでリンパ系細胞を産み出すための能力が確認された。単一のJH−標的ES65−1及びES110−1細胞から発生したキメラな動物は、単一で、完全な、ES細胞−誘導Ig重鎖遺伝子座を含む、B220+/IgMa+/Ly−9.1+ B細胞の存在を立証した。
WT及び一つが欠如したキメラ(single deletion chimeras)と比較すると、同型接合の突然変異ESDK207細胞系列から発生したマウスは、末梢血において、Ly−9.1+/B220+又はIgMa+/B220+1のB細胞を欠いていた。ES−誘導Ly−9.1+/B220+細胞が、末梢血の単核細胞の全プールの12%を占めたので、ESDK207−誘導B細胞の観察された欠如は、リンパ球が生成されないことに依るものではなかった。これらのうち、約半分はThy−1.2+T細胞であった。このように、二つの対立遺伝子からのJH領域の欠如は、IgMaを生産する成熟B細胞の発達を阻害する。同様なことが、キメラなすい臓細胞でも観察された。
【0070】
キメラは、ES細胞から誘導された血清IgMの存在についてもテストされた。IgMaレベルは、野生型ES細胞及び一つの標的突然変異誘発遺伝子を持つ細胞(cells with a single targeted mutation)からのキメラにおいて高値であった。しかし、ESDK207細胞系列から誘導されたマウスでは、IgMaは検出されなかった。
更に、分析は、ESDK207マウスの骨髄は、宿主の繊維芽細胞から誘導された正常IgMb+B細胞を含むが、ES−誘導IgMa+B細胞を欠くことを示した。けれども、DK207−誘導骨髄は、ES細胞から誘導されたB220dull/Ly−9.1+である細胞の集団(population)を含む。それ故に、骨髄には、ES細胞−誘導B細胞の前駆体の小集団(subpopulation)を多分含むだろう。そして、その成熟は、JH領域の同型接合の欠如により阻害される。
骨髄細胞は、Ly−9.1、B220及びCD43又はThy−1.2に対する抗体を用い、3色のフロー� ��イトメトリーでもまた分析された。その結果は、ES−誘導細胞の大多数がCD43陽性であることを示し、そのことは、成熟が初期に阻害されることと一致する。非常に若いB細胞の前駆体の存在から予想されたように、細胞の多くは、Thy−1.2についても陽性を示した。これらのデータは、JH領域の欠如は、並べ換えや機能的IgMを産生するための重鎖の遺伝子座の不活性化が起こっていることを示す。IgHの並べ換えの欠如により、B細胞の成熟の阻害が生じ、B細胞の前駆体(progenitors)は、初期段階での発達を制限される。
【0071】
実施例III
(Ck)領域を含むマウスIgのカッパーの軽鎖の欠如
A.置換ターゲティングベクターの形成(Construction of the replacement targeting vector)
カッパー領域は、置換型ベクター(replacement type vector)で不活性化された。その結果、カッパー遺伝子座の定常領域が削除され、相同組換えを通じて、G418薬剤耐性マーカーで置換された。相同組換えは、定常領域の側にある(flank)相同の領域により駆動された(図5参照)。
マウスのカッパー定常領域を含んで延在する(spans)、1.6kbのHpaI/BamHIフラグメントを有するマウスCk遺伝子の存在を目的として、ラムダファージによりクローン化された、129/Olaマウスの胎児肝DNA(遺伝子層:stratagene)からのゲノムライブラリーがスクリーニングされた(Steinmetz and Zachau (1980) Nucleic Acids Research 8:1693-1706)。このプローブとハイブリダイゼーションすることにより、ラムダファージのクローンが確認され、次いでこれを精製し、Ck DNAの材料として使用された。ファージDNAの分析は、カッパーの定常領域のプローブが5.6kbのSphI/BamHIフラグメントとハイブリダイゼーションされたことを示した。このフラグメントは、カッパーJ領域の遺伝子、イントロンのエンハンサー要素(intronic enhancer element)及びカッパーの定常領域を含んだ。それは、単離され、プラスミドpUC218のSphI及びBamHI部位へとサブクローニングし、プラスミドpUC218/5.6カッパーを得た。
【0072】
削除ベクター(deletion vector)を構成するために、カッパー定常領域の5'領域を含むフラグメント、陰性の選択のための(for negative selection)チミジンキナーゼ遺伝子、カッパー定常領域に相同な3'領域が一緒に連結(ligate)された(図6参照)。
プラスミドpUC218/5.6カッパー由来の4.0kbのSphI/Bsu361フラグメントは、ベクターpSK.AのSphI及びBsu361部位へとサブクローニングされ、プラスミドpSK.A/5'Kを得た。ベクターpSK.Aは、pBluescriptのKpnIとSacI部位の間に挿入された合成ポリリンカー:
5' GCATATGCCTGAGGTAAGCATGCGGTACCGAATTCTATAAGCTTGCGGCCGCAGCTCATGCGTATACGGACTCCATTCGTACGCCATGGCTTAAGATATTCGAACGCCGGCG 3'(配列番号:5)
を持つpBluescript SK−の修飾物である。
(p42-L2)プラスミドpKJtk(Tybulewicz, et al. (1991) Csll 65:1153-1163)由来のマウスのホスホグリセレートキナーゼ(PGK)の遺伝子プロモーターにより起動されるヘルペスチミジンキナーゼ(TK)の遺伝子を含む、2.7kbのEcoRI/HindIIIフラグメントが、配列:
5' AGCTGGAACCCCTTGCCCTTGGGGAACGCCGG 3'(配列番号:6)
を有するHindIII/NotIアダプターを用いて、pSK.A/5'KのEcoRIとNotI部位に挿入された。その結果生じたプラスミド、pSK.A/5'K/TKにおいて、TK遺伝子とカッパーの定常領域の遺伝子は、転写方向は反対であるが、互いに隣接している。
pMC1Neoからの1.1kbのXhoI/BamHIフラグメントは、ネオマイシンに対する抵抗性を表わす哺乳類の薬剤選択性マーカーを含むが、プラスミドpSK.BのXhoIとBamHI部位へとクローニングされ、プラスミドpSK.B/Neoを得た。ベクターpSK.Bは、pBluescriptのKpnIとSacI部位の間に挿入された合成ポリリンカー:
5' GAGCTCGGATCCTATCTCGAGGAATTCTATAAGCTTCATATGTAGCTCATGCTCGAGCCTAGGATAGAGCTCCTTAAGATATTCGAAGTATACA 3'(配列番号:7)
を持つpBluescript SK−の修飾物である。
pUC218/5.6カッパー由来の1.1kbのBg1II/BamHIフラグメントは、カッパー領域の3'末端に相同を含むが、BamHI切断されたアルカリンホスファターゼ処理pSK.Cベクターへとクローニングされ、(was cloned into BamHI digested, alkaline phosphatase treated pSK.C vector.)ベクターpSK.Cは、pBluescriptのKpnIとSacI部位の間に挿入された合成ポリリンカー:
5' AAGCTTATAGAATTCGGTACCTGGATCCTGAGCTCATAGCGGCCGCAGCTCATGTTCGAATATCTTAAGCCATGGACCTAGGACTCGAGTATCGCCGGCG 3'(配列番号:8)
を持つpBluescript SK−の修飾物である。その結果生じたプラスミド、pSK.C/3'Kは、プラスミドのポリリンカーにおいて、SacI部位からKpnI部位の方向へ転写が進行するように、配向される。
最後の標的プラスミドは、(A)pSK.A/5'K/TK由来の6.1kbのNotI/NdeIフラグメント、(B)pSK.B/Neo由来の1.2kbのNdeI/SacIフラグメント、(C)プラスミドpK.TK/neoを作るために連結されたpSK.C/3'K由来の1.0kbのSacI/NotIフラグメントを用いた、3つの部分の連結で構成される。
【0073】
B.ES細胞内のカッパー削除ベクターのエレクトロポレーション
pK.TK/neo由来の精製プラスミドDNAは、PVuIで切断さ� �、フェノール/クロロホルムとエタノールで沈澱させて、抽出された。DNAは、沈澱後に、10mMトリス−塩酸(Tris−HCl)、1mM EDTAにて、1mg/mLの濃度に再懸濁された。
胚の幹細胞系列E14−1、即ちE14のサブクローニング(Hooper, et al. (1987) Nature 326:292-295)は、15%の熱不活性化胎児牛血清、マウス白血病阻害因子(Gibco BRLからのESGRO、1000U/mL)、0.1mMβ−メルカプトエタノール、2mMグルタミン、100U/mLペニシリンを補充した、4.5g/Lグルコース含有DMEM(J.R.H.
神経細胞は核を持っている
Biocsciences)にて、5%CO2下、37℃で培養された。
その細胞は、基本的には、(Koller and Smithies (1989) supra)の記載に従って、マイトマイシン処理初期胚の繊維芽細胞支持層にて培養された。胚の繊維芽細胞は、β2−マイクログロブリンの同型接合の標的突然変異を有する14日目の胚から調製された(Koller and Smithies (1990) Science 248:1227-1230)。これらの支持細胞は、G418を含む培養基中で成長することができる。
【0074】
80%の融合(confluency)で、ES細胞が、エレクトロポレーションのためにトリプシン処理、簡単な遠心による濃縮、HEPES−バッファー塩溶液で、2×107cells/mLに再懸濁することによって、調製された。細胞は室温で平衡化され(equilibrated)、添加された標的ベクターDNA(20μg)を線状化した。混合液は、バイオラッド社のジーンパルサー(Biorad Gene Pulser)を用い、960μF、250Vでエレクトロポレートされた。細胞は10分間室温に放置されてから、マイトマイシン処理繊維芽細胞支持(層)(3×106 feeder cells/Plate)のいれた4×10cmの皿の上に置いた。37℃で48時間のインキューベーションの後、細胞に、ネオマイシン抵抗性を選択するために、150μg/mLのG418含有培養基を与えた。更に48時間後に、チミジンキナーゼ遺伝子の欠失を選択するように、細胞には、150μg/mLのG418と2μMのガンサイクロヴィア(gancyclovir)(Syntex製)含有培養基が与えられた。
【0075】
C.標的ES細胞の分析
G418及びガンサイクロヴィア(gancyclovir)を有する薬剤を選択してから10日後に、個々の生存しているコロニーが、取り出され、96穴プレートにて1滴のトリプシンにより解離され、32℃で2分間インキューベートされた。それぞれのコロニーからの細胞は、24穴プレートに、マイトマ イシンC処理支持細胞及びG418含有選択的培養基を入れ、しかし、ガンサイクロヴィア(gancyclovir)は入れない、その1穴に移された。それから5−8日後に、夫々の穴の細胞の20%が凍結され、残りは、ゲノムDNAを調製するために使用された。その細胞は、10mMトリス−塩酸(pH7.5)、100mM NaCl、10mM EDTA、1%SDS、プロテイナーゼK(1mg/mL)の(混合溶液の)0.4mLで、50℃で一晩インキュベートすることにより、溶解された。DNAはフェノール抽出及びエタノール沈澱により精製され、70%エタノールで洗浄され、10mMトリス−塩酸と1mM EDTAの20μLで再懸濁された。
【0076】
サザン分析は、各サンプルのBg1II切断ゲノムDNAを用いて行なわれた。標的ベクターの3'相同フラグメントに隣接している領域を含む、約1.2kbのBamHI/Bg1IIIフラグメントは、プローブとして利用された。自然のES細胞の遺伝子座は、約2.3kbのフラグメントを与え、一方、標的ES細胞の遺伝子座は、約5.7kbのフラグメントを与えた。大きさの増加は、削除ベクターの構成期間における、Bg1III部位の損失によるものである。
166個のクローンのサザン分析は、意図した突然変異体(intended mutation)を持つ2種の細胞系列を示した。これらのクローンは、neo遺伝子を有する(spans)約1.1kbのフラグメントでフィルターを再検索する(reprobing)ことにより、更に分析された。予期したように、プローブは、ターゲティング(targeted)対立遺伝子に対してのみ、ハイブリダイゼーションした。2つの陽性クローン、1L2−850、1L2−972からのゲノムDNAは、解凍され、増幅された後、初めの観察が再確認された。三つ目のプローブ、カッパーJ領域の遺伝子座を含んでいる約1.7kbのHindIII/Bg1IIフラグメントは、標的ベクターの5'末端からの正しい組込パターンをチェックするために使用された。このプローブとEcoRIで切断されたゲノムDNAを用いたところ、約15kbのフラグメ� �トが、自然の対立遺伝子内に検出され、約5kbのフラグメントがターゲティングの遺伝子座から検出される。付加的なEcoRI部位が、標的している相同的組換えの期間に、neo遺伝子により導入される(図7参照)。
【0077】
D.生殖系列のキメラの発生
修飾されていないE14−1細胞は、C57BL/6J胞胚への注射の後に、高い頻度で生殖系列に貢献することが分かった。ターゲティングされたカッパー領域を含む、生殖系列のキメラを発生させるために、ターゲティング細胞系列1L2−850及び1L2−972は、初期の支持細胞の上で成長させ、次にトリプシン処理されてから、15%胎児牛(calf)血清、20mM HEPES(pH7.3)、抗生物質、β−メルカプトエタノールが添加されたDMEMを含む、注射の溶媒に再懸濁された。ES細胞は、各胞胚に注射され、次に、注射された胞胚は、偽性妊娠のマウスの雌の子宮の角部の一つに移植された。キメラな子供は、キメラな皮の色により識別された。キメラな雄がC57BL/6Jの雌から生まれ、129/Ola誘導ES細胞の生殖系列の遺伝は、子孫のアグーチの皮の色により検出された。
細胞系列1L2−972から(その皮の色により判断したとき、約40%のES細胞が誘導された)1匹のキメラな雄は、C57B1/6Jの雌と交配された場合、アグーチ子孫の百分率により決められたとき、25%の頻度で生殖系列の遺伝を生じた。細胞系列1L2−850からの、キメラ な雄、約40%、70%、90%のキメラは、それぞれ、90%、63%、33%の頻度で、生殖系列の遺伝を生じた。1L2−850由来の70%キメラな雄から生じたアグーチ子孫の間では、テストされた12匹の中8匹のF1動物は、尾のサンプルから誘導されたゲノムDNAを用いた、サザン分析(プローブとして上記の、1.2kbのBam HI/Bg1 IIフラグメントを用いたBg1 II断片(digest))により標的Ck突然変異に対するカッパー遺伝子座において、異型接合体であることが分かった。更に、8匹のF1の動物のこのグループから、Ck突然変異に対して、両方とも異型接合である、雄と雌を繁殖させると、サザン分析により確認されたように、この突然変異に対する同型接合であることが分かる1匹の雄の子孫を生じた。
【0078】
E.カッパー遺伝子座が標的にされたマウスから得られたB細胞の分析
軽鎖の定常領域(Ck)、結合領域(Jk)、或いはCkとJkの両方の欠失の為に、もし、カッパー(κ)の軽鎖の遺伝子座が不活性化されるなら、κ−発現B細胞の発達に完全なる阻害が生ずるはずである。完全なるCkの欠失(△Ck)の一つのコピーを有するマウスの胚の幹細胞は、キメラなマウス を産生する為に上述の記載に従い、マウスの胞胚内へと導入された。こららのキメラなマウスは、野生型C57BL/6(B6)マウスと交配(繁殖)され、尾のDNAのサザンブロッティングにより、△Ck突然変異の存在を目的として、そのF1の子孫が、分析された。△Ck突然変異を有するF1マウス同士が交配(繁殖)され、F2の子孫が、△Ckに対して同様の分析がなされた。5匹のF2子孫の1匹が、同型接合のCk欠失を持つことが示された。もう1匹は、△Ckと野生型Ck対立遺伝子を有する異型接合であった。3匹の他の子孫は野生型であった。pan−B細胞マーカー(B220)又はκ軽鎖と反応する、蛍光抗体で染色された、抹消血のB細胞のフローサイトメトリック分析により、κ−陽性B細胞の存在或いは非存在 が、分析された。同型接合の△CkF2マウスに関し、κ−陽性B細胞は検出されなかった。異型接合においては、野生型対立遺伝子及び非機能的△Ck対立遺伝子の存在と一致する、κ−陽性B細胞の頻度は、減少した。これらの結果は、染色体からのCkの欠失が、マウスのB細胞による、κの発現を阻害することを立証した。
【0079】
実施例IV
マウスのイムノグロブリンカツパーL鎖J及び定常領域の不活性化
A.ターゲティング実験のデザイン
ターゲティングベクターは、カッパー部位の定常領域及びJ領域をまず削除し、それを定常領域をフランクする相同領域を用いた相同組換えにより、3つの要素と置換える置換型ベクターとしてデザインされた(図8)。
相同の一方又は両方の領域をフラン� ��するジフテリアトキシン遺伝子(A鎖)は、いくつかのケースにおいて、ネガティブ選別マーカーとして含有された。この3つの要素は、G418薬剤抵抗マーカー、J領域の上流に位置するカッパー部位の領域と相同なマウスDNAの、付加的なDNA相同(ADH)シーケンス、及びチミジンキナーゼ遺伝子から成る。ベクターにこのADHシーケンスが含まれる結果、この最初のターゲティングは当該部位にADHの第2コピーをプレイスする。この複製は、次いで断片間でシーケンスを選別圧力を印加して所定の(目的とする)シーケンスの削除を行うことに用いられた。この場合、細胞は、ガンサイクロヴィル(gancyclovir)選別に生残るため2つの断片間にあるチミジンキナーゼ遺伝子を削除する。
【0080】
B.ター ゲティングベクターの構成(調製)
実施例IIIで述べた如く、相同の領域は、2つのプローブを用いてスクリーンした129マウス胎児肝臓ゲノムライブラリ(Stratagene)から導出された。このサブクローンは、J領域、イントロンエンハンサー要素及びカッパーL鎖部位の定常領域を含んでいた。第2のプローブは、J領域の2.8kb上流にある、0.8Kb EcoRI断片(Van Ness et al, (1981), Cell 27: 593-602)であった。このプローブに陽性のラムダクローンからのファージDNAは、このプローブが5.5kb SacI断片にハイブリツド化されたことを示し、 pBluescript SK- (Stratagene) のSacIサイトへとサブクローンされてプラスミドpSK.5'カッパーを与えた(図8)。
相同5'領域、チミジンキナーゼ遺伝子、ADH、抗ネオマイシン遺伝子及びジフテリアトキシン遺伝子により場合によりフランクされた相同3'領域(図9)を含む不活性化ベクターは、3つのプラスミド(図8)から成っていた。これらのプラスミドとは、
(a)ネガティブ選別マーカーとしての、マウスのホスホグリセレート・キナーゼ遺伝子(PGK)プロモータにより駆動されるジフテリア・トキシン遺伝子(DT)を有する又は有しない相同5'断片、
(b)pMC1Neo (Thomas and Capecchi (1987), Cell 51:503-12) からのDSH及びG418選別性ネオマイシン(neo)遺伝子と共に、ネガティブ選別マーカーとしてのマウスのホスホグリセレート・キナーゼ遺伝子(PGK)プロモータにより駆動されるヘルプスチミジンキサーゼ遺伝子(tk)、及び
(c)DT遺伝子により駆動されるPGKを有しない相同3'断片、である。これらの3つのプラスミド(図8)は、いずれも、ポリリンカー(polylinker)の変異によるプラスミド pBluescript SK- から導出されたpSK.A, pSK.B 及び pSK.Cから成る。
プラスミド pBluescript SK- のポリリンカーは、 KpnI と SaCIサイトの間でクローニングにより変異され、このポリリンカーは、下記のオリゴヌクレオチドにより規定される。即ち:
プラスミド pSK.A をつくるため
5'-GCATATGCCTGAGGGTAAGCATGCGGTACCGAATTCTATAAGCTTGCGGCCGCAGCT-3'(配列番号:9)AND 5'-GCGGCCGCAAGCTTATAGAATTCGGTACCGCATGCTTACCTCAGGCATATGCGTAC-3'(配列番号:10)
プラスミド pSK.8 をつくるため
5'- GAGCTCGGATCCTATCTCGAGGAATTCTATAAGCTTCATATGTAGCT-3'(配列番号:11)and 5'-ACATATGAAGCTTATAGAATTCCTCGAGATAGGATCCHAGCTCGTAC-3'(配列番号:12)
プラスミド pSK.B をつくるため
5'-AAGCTTATAGAATTCGGTACC TGGATCCTGAGCTCATAGCGGCCGCAGCT-3'(配列番号:13)
、及び
プラスミド pSK.C をつくるため
5'-GCGGCCGCTATGAGCTCAGGATCCAGGTACCGAATTCTATAAGCTTG TAC-3'(配列番号:14)
である。
【0081】
ジフテリアトキシン遺伝子カセットがつくられ、遺伝子はPGKプロモーターと牛成長ホルモン・ポリアデニレーション・シグナルによってフランクされた (Woychik et al, (1984), Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 81:3944-3948; Pfarr et al, (1986), DNA 5: 115-122)。pTH-1 由来の2.3KbのXbaI/EcoRI断片(Maxwell et al, (1986), Cancer Res.46: 4660-4664),
(上記断片は、ヒトメタロチオネイン(hMTII)プロモータにより駆動されるジフテリアトキシンA鎖を含む)が、XbaI 及び EcoRI により切断された pBluescriptSK-へとクローンされ、プラスミド pSK.DT を与えた。pSK.DT の hMTII プロモータは、pKJ1由来のPGKプロモータにより置換えられた(Tybulewicz et al. (1991), Cell, 65:1153-1163). pKJ1 由来の0.5kb XbaI/PstI 断片が、pSK.DT からの3.1kb XbaI/NcoI 断片とオリゴヌクレオチド
5'-GGGAAGCCGCCGC-3'(配列番号:15)及び 5'-CATGGCGGCGGCTTCCCTGCA-3'(配列番号:16)
を用いて形成された PstI/NcoI アダプターを用いて結合され、プラスミド pSK.pgkDTを与えた。オリゴヌクレオチドプライマー
5'-CAGGATCCAGCTGTGCCTTCTAGTTG-3'(配列番号:17)及び 5'-CTGAGCTCTAGACCCATAGAGCCCACCGCA-3'(配列番号:18)
を用いて牛遺伝子DNAのPCR増幅により得られた、牛成長ホルモン・ポリアデニレーション・シグナルを含む、248bp断片がクローンされて pCR1000 (Invitron Corp., San Diego, CA) にされた。ポリアデニレーションシーケンスは次いでHind III/PvuII断片としてのDT遺伝子の後ろでHind III及びHpaIで切断されたpSK.pgkDTへとクローンされて、プラスミドpSK.pgkDTbovGHを得た。pSK.pgkDTbovGHからのDT遺伝子カセットは、2.1kbのEcoRI/HindIII断片として、オリゴヌレオチド
5'-AGCTGGAACCCCTTGC-3'(配列番号:19)及び 5'-GGCCGCAAGGGGTTCC-3'(配列番号:20)
から形成されたHindIII/NotIアダプターを用いて、移動され、プラスミドpSK.A/DTを得た。pSK.A及びpSK.A/DTの双方のSphIとBsu361サイトの間でカッパー部位の相同5'領域がクローンされた。この目的のため、4.0kb SphI/Bsu 361断片(これは、部分的Bsu361(ダイジェストに続くプラスミド・サブクローンpUC218/5.6カッパーの完全SphIダイジェストによって得られる)が、pSK.A又はpSK.A/DTと結付(リゲート ligate)され、夫々プラスミドpSK.A/5'K及びpSK.A/DT/5'Kを得る。プラスミドpSK.A/DT/5'K内では、DT遺伝子の5'−末端とカッパー断片は、互いに逆向きの転写配向をとって隣接していた。
【0082】
ブラスミドpKJtk(Tybulewicz et al, (1991), Cell 65: 1153-1163)からのPGKtk遺伝子はpSK.BのユニークEcoRI及びHindIIIサイトの間で、2.7kbのEcoRI/HindIIIとしてクローンされ、pSK.B/TKを得る。ADHのために用いた0.8kb EcoRI断片が、pSK.5'カッパーからクローンされ、pSK.B/TKのEcoRIサイトへとリゲートされ、pSK.B/(TK/0.8K)を得、tk遺伝子とカッパー断片の5'−末端は互いに逆向きの転写配向をとって隣接していた。pMC1Neoからの1.1kbのneo遺伝子は、pSK.B/(TK/0.8K)の同じ座の間で、XhoI/BamHI断片としてクローンされて、pSK.B/(TK/0.8K/Neo)を得る。相同3'断片を含むプラスミドpSK.C/3'Kは、BamHIで切断されたpSK.Cによりリゲートして構成され、アルカリ性ホスファターゼで処理して、pUC218/5.6カッパーから単離された1.1kbのBg1II/BamHI断片を得る。pSK.C/3'K内で、カッパー断片は、転写がプラスミド・ポリリンカーにおいてSacIからKpnIサイトの方へ向って進行するように配向されていた。pSK.pgkDTbovGHからの2.1kb DTカセットは、EcoRI/HindIII断片としてpSK.Cの同じ座位へとクローンされ、pSK.C/3'K/DTを得た。
【0083】
三部分リゲーションを行い最終ターゲティングブラスミド(図9)を得た。pSK.A/5'K由来の4.0kb NotI/NdeI断片、pSK.b/(TK/0.8K/Neo)(プラスミドのSacIパーシャル切断次いでNdeI切断によって得られた)由来の4.8kb NdeI/SacI断片、及びpSK.C/3'K由来の4.0kbのSacI/NotI断片が単離され互いにリゲートされ、pK.DT(TK/0.8K/Neo)を得る。pSK.A/DT/5'K由来の6.1kb NotI/NdeI断片、pSK.B/(TK/0.8K/Neo)由来の4.8kbのNdeI/SacI断片、及びpSK.C/3'K/DT(ブラスミドのSacIパーシャル切断により、次いでNdeI切断によって得られた)由来の6.1kbのSacI/NotI断片が単離され互いにリゲートされてpK.DT/(TK/0.8K/Neo)/DTを得た。電気穿孔法のため、精製されたプラスミドDNAはまずPvuI又はApaLIで切断され、次いでフェノール/クロロフォルムによって抽出され、エタノール添加により沈降させた後遠心分離を施した。結果生じたDNAペレットは10mMのTris-HCl, 1mM EDTA(TE)溶液中に1mg/mlの濃度で再懸濁された。
【0084】
C.DNAへの細胞内への導入
胚性幹細胞系E 14-1を実施例IIIのように培養した。細胞は、室温で平衡化(equilibrate)し、PvuI(既述)で線状化したDNA(20μg)を添加した。この混合物に実施例IIIのように、電気穿孔法を施した。
D.定常領域をターゲティングされたES細胞の分析
G418による薬剤選別を7〜10日行った後、各生存コロニーを取出し、実施例IIIのようにトリプシン液滴中に解離させた。
サザン分析を、各サンプルからのBgIII切断したゲノムDNAを用いて行った。ネイティブES細胞部位からは、2.3kbの断片が検出され、ターゲティング処理したES細胞の座からはより大きな4.9kbの断片が検出された。(この検出には、ターゲティングベクタ内の3'相同のために用いられた断片と隣接のオリジナルファージ(phage)DNAから単離された1.2kbのBamHI/BgIIIをプロ� �ブとして用いた。)断片は寸法が増大したが、それはBglII/BamHI断片中のBglIIサイトがターゲティングブラスミド内で、リゲーションにおいてBamHIサイトへのBglIIサイトの結合の結果、欠失し、そして、チミジンキサーゼ遺伝子内にあった新しいBglII座が、標的座へ導入された結果である。
サザン分析による上述の選別から、即ち、3つの異ったターゲティングプラスミドを用いた実験により導かれた全部で103クローンのスクリーンから目的とする突然変異を有する5つの細胞系が確認された(表1)。
【0085】
【表1】


【0086】
解きほぐし(thawed)伸長させた後陽性クローン(クローン625,604,611,653)の4つからつくられたゲノムDNAの追加分析によれば、最初の結果が再確認された。第2プロープ、カッパー部位のJ領域に亘って存在する1.7kbのHindIII/BglII断片を用い、ターゲティングベクタの5'末端における相同ターゲティングを観察して正しいインテグレーションパターンがチェックされた。かくて、このプローブをゲノムDNAのEcoRI切断片と共に用いることにより、未修飾の対立遺伝子(allele)から15kbの断片が検出された。これに対し、ターゲティングした対立遺伝子からは、7.8kbの断片が、相同インテグレーションの間にチミジンキナーゼ遺伝子への新しいEcoRIサイトの導入の結果として、観察された(図11)。
【0087】< br/>E.ターゲティングしたクローンからのJ領域DNAの in vitro 切除
相同時にターゲティングしたカッパー部位から所望の削除を行うため、クローン653からの細胞をフィーダー細胞の上に、0.5-1x106セル/10cm皿の濃度でガンサイクロヴィル(gancyclovir)2μM及びG418(150μg/ml)の薬剤併存下に、プレートした。前記両薬剤併存下で5日間の生長の後、クローンを既述のように24個のウエルプレートに取出し、G418のみの単独選別下に生長させた。さらに5−8日の後、各ウエルの細胞の各20%を凍結し、残部は既述の如くゲノムDNAを調製するのに用いた。
【0088】
F.J/定常領域を削除したESセルの分析
各サンプルからのBamHI切断したゲノムDNAを用いて、サザン分析を行った。
ターゲティングベクターにおいてADHとして用いた0.8kb EcoRI断片をプローブとして用いて、ネイティブなESセル部位からは12.7kbの断片が検出された。これに対し、クローン653からのDNAを用いての定常領域をターゲティングしたESセル部位(図11)からは、より大きな15.8kb断片が検出された。断片の寸法は、tkジーン、ADH、及びneoジーンを、12.7kbのBamHI断片へ挿入したことにより増大した。また、neoジーンの3'末端に導入された新しいBamHIサイトがあった。制限マップの分析により予見された通り、J/定常領域を削除したセルからのDNAを用いる、非標的(untargeted)対立遺伝子からの12.7kb断片に加えて、修飾(変性)部位からは5.5kb断片が検出された。
プレートされた1.5x106ESセル(クローン653)からつくられた2つのクローンのサザン分析による選別により、一つの細� �系(クローン653B)が目的としたJ及び定常各領域(「J/定常領域」という)の削除を有することが確認された。
【0089】
thawed 及び伸長されたクローン653BからつくられたゲノムDNAの更なる分析により、上記最初の観察が再確認された。0.8kb EcoRI断片を用い、この切断は、他の2つの制限ダイジェスト(digests)でチェックされた(これらのダイジェストはターゲティングベクターの5'及び3'末端で切除される領域(excised region)の外側を切断するべきものである)。かくて、非切除クローン653からのゲノムDNAのBgIIIダイジェストにより、このプローブを用いて、非修飾及び修飾の両方の対立遺伝子から、2.6kb断片が検出された。これに対しターゲティング対立遺伝子のみからは付加的に4.9kbの断片が検出された(図11)。この4.9kb断片は、前に用いた1.2kb BamIII/BglIIにより検出されたものと同じものであった。クローン653BからのDNAを用いてのBglIIダイジェストは、5.8kb断片を、非修飾対立遺伝子からの2.6kb断片に加えて、明らかにした。0.8kb EcoRI断片でプローブされたクローン653DNAのSaCIダイジェストは、5.5kb断片を非修飾及び修飾両方の対立遺伝子から、そして3.1kb断片をターゲティングした対立遺伝子のみから、示した(図11)。この5.5kb断片は、クローン653BからのDNA中にも、付加的な2.0kb断片と共に検出された。これらの5.8kb断片と2.0kb ScaI断片は、J領域、tkジーン及びADHの一つのコピーを含めて10.3kbのDNAを削除した。
精密な切除ステップのための、予見された制限マップの分析結果と一致した。
【0090】
G.生殖系キメラの生成(generation)
非修飾E14-1セルは、C57BL/6J 胚盤胞への注入後高い頻度で生殖系に寄与した。ターゲティングES細胞系691からのセルは、唯一カッパー定常領域がネガティブ選別によらずに相同組換えによって削除されているが、上記セルを微量注入(microinject)して、実施例IIIに記載した如く、キメラ動物がつくられた。ターゲティングしたES細胞系653B(カッパー定常/J各領域が削除されている)からのセルを、同様に微量注入して、以下同様にしてキメラ動物をつくった。キメラpupsはキメラコート(coat)の色により確認される。生殖系トランスミッション(germline transmission 即ち修飾ESセルの由来の生殖細胞を有すること)は、F1オフスプリングのアグーチコート色によって検出される。
【0091】
実施例V
酵母合成染色体を用いたヒトH鎖部位のクローニング
ヒトH鎖を含む酵母合成染色体(YAC)の
ヒトH鎖VH6-D-J-Cμ-Cδ領域に亘る(span)SpeI断片(Berman et al, (1988) EMBO J. 7:p727-738; 図15参照)をヒトYACライブラリ(Burke, et al., Science, 236: p806-812)から、Berman et al (1988)EMBO J. 7:P727-738に記載のDNAプローブを用いて、単離する。約100kbと評価される一つのクローンが得られる。単離YACクローンは、パルスフィールドゲル電気泳動(Burk et al, 上掲書:Brownstein et al, Science, 244: P1348-1351)により、ヒトH鎖のための放射性同位体ラベルしたプローブ(Berman et al, 上掲書)を用いて、特性付けられる。
【0092】
B.YACクローンの胚又はESセルへの導入
高い分子量のDNAを、対象とするYAC(即ちIgH部位からの前記のSpeI断片を含むYAC)を含む酵母セルから、寒天プラグ中にて調製する。このDNAをCHEFゲル装置寸法(長さ)について分画し、低融点のアガロースゲルから切出す。ゲル断片は、ポリアミンにより平衡化し、次いで溶融し、アガロースをアガラーゼで切断処理する。次いでポリアミンコートしたDNAを受精した(fertilized)マウス胚の雄の前核中へ注入し、この胚は外科的に擬受胎雌の子宮へ、上述の如く、導入する。新生代のトランジェニックな性質は、尾から単離したDNAのスロット−ブロットにより分析し、ヒトH鎖の生成を、少量の血清をとり、ラビットの抗� �ト抗体でIg鎖の存在をテストすることにより分析する。
微量注入法に対する別法として、YAC DNA をマウスのESセル内にESセル:酵母原形質融合によって導入する(Traver et al., (1989) Proc. Natl. Acad. Sci.,USA, 86;P5898-5902;Pachnis et al., (1990), 同上87; P5109-5113)。第1に、PMC1Neo、HPRT又は他のホ乳動物選択性マーカーと酵母選択性マーカーをプラスミド内のノンエッセンシャルなYACベクターシーケンス中へ挿入する。この構成物は、IgH YACを含有する酵母株を形質転換するのに用いられ、pMC1Neo(又は他の選択性マーカー)が相同組換えによりIgH YAC のベクターシーケンス中へと組込まれる。修飾されたYACは、次に、プロトプラスト融合法(Traver et al., (1989); Pachnis et al., 1990)によりESセル内に導入され、生成する抗G418-ESセル(又は他の選択性フェノタイプ)(これは完全なヒトIgHシーケンスを含む)がキメラマウスの生殖に用いられる。他の方法として、精製YACを、例えば、リポソーム法(lipofection)又はリン酸カルシウム(媒介DNA導入)法によって、ESセルへ導入(transfect)する。
【0093】
実施例VI
ヒトIg遺伝子のマウスへの導入
A.酵母中でのヒトIgジーンのクローニング
1.VH, D, JH, mu 及びデルタシーケンスを含むヒトIgH YAC クローンの固定及び特徴付け(分別)
ワシントン大学ヒトYACライブラリ(Washington Univ. St., Louis, MO)からのDNAプールをスクリーンするため、ヒトVH6ジーン(V6A=5' GCA GAG CCT GCT GAA TTC TGG CTG 3'(配列番号:21)とV6B=5' GTA ATA CAC AGC CGT GTC CTG G 3'(配列番号:22))を用いた。次いで陽性プールはコロニー融合によりスクリーンされ、一つの陽性マイクロタイタープレートウエル、A287-C10が同定された。205kb及び215kbの2つの異った長さの、VH6-含有YACが、微量滴定(microtiter)ウエルから単離された。VH6に加え、この2つのIgH YACsの中の小さい方、A287-C10(205kb)は、下記のシーケンスのためのプローブへと融合された:デルタ、mu, JH, D, VH1, VH2 及びVH4。一方上記2つのIgH YACsの中の大きな方、A287-C10(215kb)は、デルタ、JH, D, VH1, VH2 及び VH4 のプローブへと融合されたが、muは除く。このYACsは、少なくとも5VHジーンからのシーケンスを含み、これらのジーンとは、2つのVH1、一つのVH2、一つのVH4及び一つのVH6のジーンであった。制限ダイジェスト結果の分析により、205kb YAC はDジーンクラスターのいくつか(しかし全てではなく)を除去し、当該YACの残余は完全な形と見受けられ、生殖系の形(germline configuration)に現われる。205kb YAC の PCR及び詳細な制限ダイシェスト分析は幾つか(several)の異ったDジーンファミリーメンバーの存在を示した。215kb YACは、完全なメイジャーDジーンクラスタを含むように見受けられるが、muジーンの除去する(約10kbの)欠失を有した。この欠失(deletion)はJH及びmuのジーンの間に位置するJHクラスタ又はエンハンサには影響しないように見受けられる。
【0094】
上述の2つの関連するIgH YACs の推定先の親(progenitor)、即ちVH2ジーンとデルタジーンの間の全てのゲノム領域を含む225-230kbのYAC(Shin et al., 1991, 前掲)(図15参照)は、A287-C10微量滴定ウエル内には確認されなかった。かくて、親YACを、ライブラリの継代(passaging)の間にそれが喪失されたとの仮定の下に親YACのサーチを行うために、A287-C10微量滴定プレートウエルの早い方の画分が調べられた。A287-C10の微量滴定ウエルは、画線接種(Washington Univ., St. Louis, MO)され、分析した10クローン中の2つが、他の明らかに無関係のYACと共に230kbのIgH YACを含んでいた。クローン1はIgH YACに加え、約220kbのYACを含み、クローン3はさらに約400kbのYACを含んでいた。このIgH YACはmu、完全なDプロフィル(BamHI切断に基づく、下掲参照)及びJHを含んでいた。クローン1からのIgH YACは減数分裂分離により、A287-C10/AB1380及びYPH857(遺伝子型=MaTα ade2 lys2 ura3 trp1 HIS5 CAN1 his3 leu2 cyh2)のクロスにおいて物理的に分離して、A287-C10(230kb)/MP313を得た。(ホスト遺伝子型=MATα ade2 leu2 lys2 his3 ura3 trp1 can1 cyh2)
【0095】
2.A287-C10 kb YAC のホ乳動物選択性マーカーHPRTによるターゲティング
YAC右アームターゲティングベクターpLUTO(15.6kb)が、6.1kb BamHI断片(Reid et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87: P4299-4303 (1990))上において含まれるヒトHPRTミニジーンをpLUS のポリリンカー内のBamHIサイト(Hermanson et al., Nuclei Acids Research 19: P4943-4938(1991))へとサブクローニングすることによって生成された。230kb IgH YAC及び無関係YACの両方を含むA287-C10/AB1380カルチャーが線状化したpLUTOと共にトランスフォームされ、Lys+トランスフォーマントが選別された。Lys+クローンは、muの存在チェックのためコロニー融合によりスクリーンされた。一つのクローンが同定され、それは単一YAC(約245kb)を含み、muのプローブHPRT及びLYS2へと融合された。
pLUTOでターゲティングした230kbのA287-C10 YACのサザン分析が、クローンされたヒトIgHシーケンスの完全な、再組換されていない(unrearranged)性質を立証するための様々なプローブを用いて、行われた。大部分のケースにおいて、BamHI, HindIII及びEcoRI切断の結果がWI38(ヒト胚のfetal肺−由来のセル系列統)、A287-C10由来の205kb及び215kb欠失誘導体、並びに公表された値に対する制限データと比較された。D領域プローブ(0.45NcoI/PstI断片;Bermal et al., 1988)による融合により決定されたダイバーシティ(D)ジーンプロフィルは予期された4つのDジーンセグメントD1〜D4(Siebenlist et al., 1981; Nature, 294 ; P631-635)を示した。例えばBamHIによって、3.8kb, 4.5kb, 6.9 kb及び7.8kbの4つの制限断片がA287-C10 及び WI38に認められた。WI38は、さらにもう一つの大きなバンドで染色体16 D5領域から由来すると推定されるものをもっていた(Matsuda et al. 1988, EMB0 7:P1047-1051)。Dファミリーに特異的なファミリー及びプローブによるPCR及びサザン分析は、215kb削除−誘導YAC(これは230kb YACと同じ制限パターンの完全なD領域をもつように見えた)内に、下記のDジーンファミリーの各々の2〜4個の存在を証した:DM, DN, DK, DA, DXP及びDLR, A287-C10 230kb YAC(プライマー EnA=5' TTC CGG CCC CGA TGC GGG ACT GC 3'(配列番号:23) とEnB1=5' CCT CTC CCT AAG ACT 3'(配列番号:24))由来のクローニングされたPCR産生物からシーケンスされ完全であると確認された、J-muイントロンエンハンサーも、480bp PCR産生物によりプローブされたとき、BamHI, EcoRI, 及びHindIIIで汎そ予測された各寸法の単一制限断片を生成した。JH領域は、DHQ52及び全JH領域に亘る約6kbのBamHI/HindIII断片プローブで評価された(Ravetch et al. 1981, Cell 27; p583-591)。A287-C10は汎そ予測して各寸法の制限断片を生じた。さらに、同一寸法の制限断片がエンハンサー及びJHプローブによって検出された(Ravetch et al.
, 上掲;Shin et al., 1991, 上掲)。A287-C10及びWI38にて検出された約18kb BamHI JH断片も、融合して0.9Kb muプローブシーケンスになった(Ravetch et al., 上掲)。0.9kb EcoRI断片muプローブ(Ravetch et al., 上掲)との融合は、予測された寸法に近い制限断片を示した(Ravetch et al., 上掲;Shin et al., 上掲):即ち>12kb BamHI(予測値は約17kb);0.9 kb EcoRI(予測値は0.9kb)及び約12kbのHindIII(予測は約11kb)である。WI38はA287-C10と同一寸法のBamHI断片を生じた。JH及びDHQ52領域は削除誘導YACsの双方からシーケンスされ、双方共生殖系コンフィギュレーションにあった。デルタはエキソン1PCR産物(これは、プライマーD1B=5' CAA AGG ATA ACA GCC CTG 3'(配列番号:25)及び D1D=5' AGC TGG CTG CTT GTC ATG 3'(配列番号:26)の間の約160 bpを含む)で分析された。A287-C10の制限断片は文献からの予測値(Shin et al.,上掲)並びにWI38について決定した値に近かった。YACの3'クローニング座位は、デルタの第1EcoRIサイト3'(Shin et al., 上掲)、又は他のEcoRIサイトさらなる3'でありうる。VH1, VH4及びVH6(Berman et al. 上掲)のための、及びVH2(Takahashi et al., 1984, Proc., Nat. Acad. Sci, USA 81; P5194-5198)のためのVHジーンプローブが、YACの可変ジーンコンテンツを評価するために用いられた。A287-C10は、予測した値に近似する2つのVH1ジーンを含む(Shin et al., 上掲;Matsuda et al., 1993, 上掲);3つの酵素による制限分析は、予測した断片寸法に近い値を与えた;例えば、EcoRIにより観察されたバンドは、3.4kb及び7.8kbであった(予測値は3.4kbと7.2kb)。
【0096】
VH4についての(測定値5.3kb、予測値5.1kb)及びVH6についての(測定値0.8kb、予測値0.9kb)(Shin et al., 上掲;Matsuda et al., 上掲)予測寸法EcoRI断片は、A287-C10内に存在した。予測寸法EcoRI断片は、VH2(測定値5.5kb、予測値5.4kb)について認められたが、BamHI及びHindIII断片は、予測した値とは異った。BamHI及びHindIII断片のpBR322プローブとの一致融合(coincident hybridization)は、VH2ジーン(Shin et al., 上掲)の5'末端にあるEcoRIサイトが5'クローニングサイトであり、かくて、天然の5'HindIIIサイト及びBamHIサイトを欠失(ないし不要eliminate)することを示唆した。YACインサートの全体の寸法(約220kbと評価される)は、3'-most VH2ジーンの5'末端から開始し、デルタ部位のEcoRIサイト3'まで伸長する完全な、非組換え(unrearranged)セグメントに対する予測寸法(Shin et al., 上掲)によく一致する。
【0097】
3.CK及びVKシーケンスを含むIgK YAC の同定及び特徴付け
Washington Univ.(St. Louis, MO)ヒトYACライブラリーからの、パルスフィールドゲル(PFG)プールのスクリーンにおいて、ヒトカッパー定常領域(CK)ジーン由来のプローブによって(2.5kb EcoRI断片ATCC, No. 59173, Parklawn Dr., Rockville, MD)同定された。A80-C7(170kb)及びA276-F2(320kb)と命名されたYACsはカッパー削除要素kde, CK, JK 及びC-Jイントロンエンハンサーを含み、kdeを越えて3'を伸長する(extend3')。JKから5'を伸長して、YACsはまた、融合法及び/又はPCR法により決定されるB1, B2及びB3 VKジーンをも含み、そして他のVKシーケンスも含みうる。A80-C7/AB1380株は、IgK YACに加えて、同様な寸法の無関係なYACをも宿らしめた(housed)。従って、減数分裂分離を用いてこれらのYACsを分離した;A80-C7はYPH857とクロス(交配)させ、減数分裂産物としてIgK YACのみを含むもの(MP8-2;ホスト遺伝子型=αade2 leu2 his3 his5 lys2 ura3 trp1 can1 cyh2)。A80-C7及びA276-F2 YACsは、pLUTOでターゲティング処理し、ヒトHPRTミニジーンをYAC右ベクターアーム中へ組込んだ。
【0098】
多くの酵素を用いてのIgK YACs A80-C7及びA276-F2の制限分析は、これら両方のYACsが組換えされていない(unrearranged, 即ち、生殖系コンフィギュレーションにある)ことを裏付ける。例えば、BamHI分析とこれに続くCKプローブによる融合により、期待された13kb制限断片(Klobeck et al., Biol: Chem. Hoppe-Seyler 370; p1007-1012 (1989))を立証する。同一寸法バンドはJKプローブ(JK1-5領域を増幅するプライマーセットを用いた、1.2kbのPCR産物)と、ゲノムマップ(Klobeck et al., 上掲)で予見された如く、融合する。B3クラスIVジーン(プローブはB3ジーンからの123 bp PCR産物)は、夫々文献の値4.6 kb, 2.3kbに近い4.9kb BamHIと2.2 kbBglII断片とを与える(Lorenz et al, Molec. Immunol. 25; p479-484 (1988))。下記のカッパー部位シーケンスについての、IgK YACs及びヒトゲノムDNAのPCR分析は予見されたバンド寸法を明らかにしたKde(120bp), CK(304bp), C-Jイントロンエンハンサー(455bp),JK1-5(1204bp)、B3VK(123bp)及びB1VK擬似ジーン(214bp)。CK, JK及びC-Jエインハンサー領域のためのPCRプライマーをデザインするのに用いたシーケンスは、Whitehurst et al., Nucl. Acids. Res. 20; P4929-4930 (1992)からのものであり、KdeはKlobeck and Zachau, Nucl. Acids. Res. 14: P4591-4603 (1986) からのもの;B3はKlobeck et al., Nucl. Acids, Res. 13; P6515-6529 (1985)から;そしてB1はLorenz et al.(上掲)からのものである。
【0099】
B.680kb yHPRT YAC のESセルへの導入
1.yHPRT酵母株の培養及び酵母スフェロプラストの調製
680kb yHPRTは、Huxley, et al. (1991) Genomics 9: p742-750に記載されるように、YACライブラリーからクローニングされたヒトヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)ジーンである。yHPRTを含む酵母株は、ウラシル及びトリプトファン欠乏液媒体、Huxley et al. (1991)(上掲)、中で成長された。
酵母スフェロプラストを調製するため、yHPRTを含む400mlの酵母カルチャーをスピンダウン(spin down)しイーストペレットを一度水洗し、一度1Mソルビトールで洗浄した。イーストペレットは、5×108イーストセル/mlの濃度にて、SPEM中に再懸濁された(SPEMの組成は、1Mソルビトール、pH7.5の10mMリン酸Na, pH8.0の10mM EDTA,及び30mMβ−メルカプトエタノール)。ザイモラーゼ20Tを150μg/mlイーストセルの濃度で添加し、カルチャーは、90%のセルがスフェロプラストになるまで(通常15-20分)、30℃でインキュベートされた。セルは、STC(1Mソルビトール、10mMトリスpH7.5, 10mM CaCl2)で2度水洗し、2.5×108/mlの濃度でSTC中に再懸濁した。
【0100】
2.E14TG2a ESセルの培養
HPRT-陰性ESセル系 E14TG2aを、既述のように、培養した。
【0101】
3.ESセルと酵母スフェロプラストの融合
ゼラチンコート皿上でエキスポエンシャルに成長するE14TG2a ESセルをトリプシン処理し、血清フリーDMEMで3度洗った2.5×108の酵母スフェロプラストペレットを、注意深く、5×106ESセル(酵母ペレット上へスピンダウンして)でオーバレイした。組合されたペレットは10mM CaCl2含有の50%PEG1500又は50%PEG4000(Boeringer Mannheim 製)の0.5ml中に再懸濁した。室温又は37℃で1.5分インキュベート後、5mlの血清フリーDMEMを徐々に加え、セルを室温で30分間静置した。次いで、セルはペレット化し、ESセルコンプリートメディウム(既述)10ml中へ再懸濁させ、さらにフィーダーセルでコートした一つの100mmプレート上へプレート化した。24hr後メディウムを新しいもので更新した。融合後48hr(48 hours post-fusion)で、HAT(1×10-4Mヒポキサンチン、4×10-7Mアミノプテリン、1.6×10-5チミジンを含むESメディア)選択を行った。抗HAT ES コロニーが融合後7-10日で、採用した異った融合条件の双方からのプレート中に、観察された。yHPRT-ES(「ESY」という)融合コロニーを取り出しフィーダーコートしたウエルの上へプレート化し、他の分析のために伸長させた。
【0102】
4.yHPRT-ES融合クローン内へ挿入したYAC DNAの分析
23yHPRT-ES融合コロニーから抽出してDNAをHindIIIで切断し、下記のプローブを用いてサザンブロット分析にかけた(図12):ヒト反復Aluシーケンス(A);右(B)及び左(C)YACベクターアームのためのpBR322-特異性シーケンス;酵母Ty反復シーケンス(D);酵母単一コピージーンLYS2(E)。ヒトHPRTプローブ、1.6kbのフルサイズcDNA(Jolly et al., Proc. Natl. Acad. Sci: USA 80; P477-481 (1983))がESYクローン中におけるヒトHPRTジーンの存在の確認のために用いられた。Aluプローブは、pBP63A内のBLUR8 Alu要素からの300bp BamHI断片であった(Pavan et al, Proc. Natl. Acad. Sci: USA 78: P1300-1304 (1990)。右及び左ベクターアームプローブは、夫々、1.7及び2.7kpの、 pBR322から導かれたBamHI-PvuII断片であり、これら、pYAC4内でのベクターシーケンスに対応する(スキームa,b, Burk et al., in ; Guide to Yeast Genetics and Molecular Biology, Methods in Eazymology, Guthrie and Fink, eds., Academic Press, 194,: P251-270 (1991)).右アームプローブにより検出された4.5kb断片は、ヒトインサート内で、テレメア5'末端でのHindIIIサイトと第1HindIIIサイトとの間に亘る(スキームa)。左末端プローブにより検出された3kb及び4.1kb断片は、夫々酵母シーケンスのテレメア末端でのHindIIIサイトとHindIIIサイト5'との間及びセントロメアのHindIIIサイト3'からヒトインサートの中までに亘る(スキームb)。これらの2つのバンドの融合インテンシティの差、これらの断片とプローブの間における相同性の程度差に関係する。酵母Ty反復プローブ(Philippsen et al. in Gene Expression in "Yeast", Proc. of Alko Yeast Symposium, Helsinki, Korhola and Vaisanen, eds., Foundation for Biotechnical and Industrial Fermentation Research , 1 : P189-200 (1983))はTyl含有pJEF742から単離された5.6kb×xhoI断片であり、それは2つの要素間の相同性によりTy2の3'HindIII断片をも検出しえた。LYS2ジーンプローブは、pLUSからの1.7BamHI断片であった(Hermanson et al, Nuc. Acids, Res. 19: p4943-4948 (1991))。
【0103】
ヒトHPRTプローブ(全長で1.6kb cDNAプローブ)での融合は、分析した全てのクローンが、yHPRT YACと同じヒトHPRTジーンの15, 7 及び 5kbのエキソン含有断片を含んでいた。ヒト反復Aluシーケンス300bpプローブでの同じブロットの報告は、分析した全てのクローンが、大部分(全てではないにしても)、yHPRT中に存在するAlu-含有断片を含んでいることを示した(図12)。これらのデータは、分析した大部のクローンにおいて、680kbヒトインサートは、ESセルゲノム中への挿入に際して、検出可能な程度には組換え又は削除が行われていないことを示す。YACベクターシーケンスの挿入を、ベクターアームに特異的なプローブを用いて調べた。右YACベクターアームのためのプローブにより同じブロットの再融合は、4.5kb HIndIII断片を検出するが、分析した23クローン中の10クローンにおいて、テレメアまでの右YACアームが今なお完全であり、組換えもなく、ヒトインサート(図12B)に結合(link)されていることを、示しており、かくて、さらに、これらのクローン内でのYACの一体性を裏付ける証拠をなす。分析した20クローンの内18クローンにおいて、左アームプローブは、3kb及び4.1kb HindIII yHPRT断片を検出したが(図12C)、これは左アーム保持の高い頻度を示すものである。
【0104】
ESYクローン中でのyHPRTの構造的一体性(integrity)がさらに、2つのクローン(ESY5-2及び8-7)について評価された。yHPRTを担持する酵母において次の各種プローブにより汎そ下記の通りの5つのSfi断片が異ったプローブによって確認された:即ち、315kb(Alu,左アーム)、145kb,(Alu, HPRT);95kb(Alu, 右アーム)、70及び50kb(Aluのみ)。いずれのESクローンにおいても、内部HPRT及びAlu-特異性の断片の寸法は、yHPRT断片に類似の寸法であった。双方のクローンについて検出された末端断片は、マウスの染色体内で組込まれたYACsについて期待されたように、yHPRT内よりもより大きく、即ち、右末端断片に夫々対している185及び200kbであり、両クローンの左末端断片は800kb超である。これらのデータは、Aluプロフィルと共に、これらのクローン内でのYACの構造的一体性の保持(保存)のための追加的証明を提供する。これらの研究は、ESY8-7(図13A, B)及び8-6メタフェーズ染色体スプレッズ(spreads)に対して行われた蛍光in-situ融合法により捕足され、ヒトシーケンスに対する単一の組換座(integration site)が検出された。ビオチニレイトされたヒトゲノムシーケンスのESY8-7セル(図13A, B)及びビオチニレイトされた酵母の反復DNAシーケンスと融合されたESY8-6セル(図13C, D)の代表的なメタフェーズスプレッズ(metaphase spreads)(図13A, B, C)又はインターフェーズ核(図13D)の顕微鏡写真を示す。ヒトプローブはヒトゲノム胎盤DNA(Clontech, Palo Alto, CA)から得られた。酵母プローブは酵母反復要素をエンコードするDNA断片の下記の混合物から成るものであった;即ちデルタ(pdelta6の1.08kb Sau3A断片(Gafner et al., EMBO J. 2: P583-591 (1983))及びTy(P29の1.35kb EcoRI-SaII断片(Hermanson et al., Nuc. Acids. Res. 19: P4943-4948 (1991))、rDNAs(4.6kb BglIIk-A L90及び4.4 kb BglII-B L92断片(Keil 及びRoeder, Cell 39; p377-386 (1984))、及びY'テレメア要素(p198の2.0kb及び1.5kb BglII-HindIII断片(Chan 及びTye, Cell 33: P563-573 (1983))であった。染色体メタファーゼスプレッズ時シーケンスのビオチニレイトされたプローブとの融合及びAvidin-FITCによる検出とさらに続くビオチン−アンチ−Avidin及びAvidin-FITC増幅は、Trask及びPinkelにより、Methods Cell Biol. 30: P383-400 (1990)に記載の仕方で、ツァイスのAxiophot顕微鏡を用いて、行われた。染色体は、沃化プロピジウムによりカウンターステインされた。示した顕微鏡写真は、ヒト又は酵母プローブで行った3つの独立な実験において走査されたメタフェーズスプレッズ又はインターフェーズ(中間休止期)核の95%を代表するものである。ヒトシーケンスに対する単一の組換え座(integration site)が検出された。
【0105】
また同じブロットがESYクローン内での酵母ゲノムDNAシーケンスの存在の確認のため酵母Ty反復要素シーケンスでプローブされた(図12D)。幾つかのクローンについて親(parental)酵母株内にあるTy-含有断片の大部分を含むことが認められたが、一方幾つかのクローンについては、Ty-含有断片の、もしあったとしても、極めて小さな断片を有することが認められた。これらの結果は、幾つかのESクローンにおいて、YAC DNAは完全に組換えられてはいるが、酵母ゲノムDNAはほとんどないしは全く組換えられて(integrate)いないことを示す。ESセルゲノム内の単一又は複数の座に酵母染色体DNAが組込まれたか否かを調べるため、蛍光in-situ融合法を、完全なTyプロフィルを有するESY8-6クローンに対して行った。組換え酵母反復プローブを用いて、単一の組換え座が検出された(図13C, D)が、これは、解像限度内において、全ての酵母DNA断片は一つのブロックへと結合されたことを示す。
【0106】
ESセルのin vitroな通常の選別(differentiation)を行う能力を用いて、YAC安定性及び組換えDNAのESセルのプルリポテンシーに対する影響が調べられた。異った量の酵母DNA(ESY5-2, 3-6, 8-6, 8-7)を含む、ESクローンは、非融合セルのそれと区別できない選別パターンを示した;即ち、胚体の形成は多くの選別されたセル型を提起した(図14A)。サザンブロット分析を(a)ヒトAluプローブ、と(b)酵母Tyシーケンスを用いて、選別されたESY5-2, 3-6, 8-5及び8-6(20μg)からAB1380(40ng)中で抽出されたDNAに対して行った。ESクローンは、Martin及びEvans, Cell 6: P467-474(1975)に記すように、それをサスペンション中での集合として10-14日間培養することによって、誘導された。培養基へのそれらの再付着に従って、ESY-誘導胚体は、選別されたセル型を与えた。YAC及び酵母DNAシーケンスは、非選択性媒体中で、40日間の培養期間中選別されたESクローンによって安定に保持されたが、このことは、安定に組込まれた外来DNAは、ESセルのプルリポテンシー(pluripotency)を害さないことを示す(図14B)。選別されたカルチャーは、その正常な成長とHAT-選択性媒体へ移された際の選択性に基づき、機能的なヒトHPRT遺伝子を保持した。
【0107】
5.yHPRT-ESセル系からのキメラマウスの産生
マウスを、生殖系列を含めて、増殖(repopulate)するESYセルの能力は、ESセルをマウスの胚盤胞の中へ微� �注入することによって示され、キメラマウスの産生が示された。キメラ雄をL57BL/6J雌と交配させ、生殖系列はアグーチ子孫の存在によって確認された。キメラマウスの尾から調製したゲノムDNAを分析し、PCR分析によってマウスゲノム中にyHPRT DNAが存在するかを調べた。YAC左アームの存在は、2つのプライマー作用をするオリゴヌクレオチド、5' TTCTCGGAGCACTGTC CGACC(配列番号:27)と 5' CTTGCGCCTTAAACCAACTTGGTACCG(配列番号:28)を用いて分析したが、これらのオリゴヌクレオチドは、pBR322シーケンス及びYAC左ベクターアームのSUP4ジーンから導いたものである。A259bp PCRプロダクトは、yHPRT及びESYセル系を含む酵母の分析によって得た。ESYセル系ESY3-1, ESY3-6及びESY5-2から産生された18のキメラマウスから調製した尾DNAのPCR分析は、期待したPCRプロダクトを与えたので、これは、キメラマウスのゲノム内でのYAC左ベクターアームの存在を証する。
【0108】
6.yHPRTの生殖系列遺伝(germ line transmission)
コートカラーキメラ度30〜60%のキメラ雄をESYセル系ESY3-1, ESY5-2から導き、生殖系列遺伝(受継)評価のための交配に供した。即ち、遺伝子の修飾が生殖細胞(精子又は卵母細胞)を経て動物の子孫へと伝えられるかどうかを調べた。ESY3-1から導いたキメラ雄の3つ、394/95-1, 394/95-2, 411-1が、夫々頻度20%, 30%, 30%でその子孫へとESセルゲノムを伝えた。アグーチの子供(pups)からの尾DNAのサザンブロット分析は、394/395-2キメラから導いた3つのマウス4-2, 4-3, 5-1のゲノム内にyHPRTが存在することを示した。この分析から得られたAluプロフィルは、親のES3-1セル系のそれと区別不可能であった(図14C)が、これは680kbのヒトインサートが忠実にマウス生殖系へ伝えられたことを示す。
【0109】
yHPRT含有子孫からのmRNA-誘導cDNAに対する、ヒトHPRT-特異的PCR分析を用いて、テストされた全ての組織内でのヒトHPRT遺伝子の発現が検出された(図15A, B)。かくて、それは、伝えられたYACがその機能を確実に保持したことを示す。この実験において、ES, ESY3-1及びHut78(ヒト)細胞、対照マウス(C)若しくは4-3アグーチ子孫(394/95-2キメラから導出)脾臓及び肝臓、及びテンプレートDNAを含まないサンプル(図15Aで「-」で示す。)における、逆転写(RT)-PCRによって、ヒトHPRT mRNAが検出された。ポリ(A+)RNAの逆転写及び特異的cDNAシーケンスのPCR増幅は、cDNAサイクルキット(Invitrogen)を用いて行った。マウスHPRT cDNAの存在下での、ヒトHPRT cDNAからの626bp断片の特異的増幅は、Huxley et al. (上掲)に示す通りに行った。全てのRNAサンプルのインテグリティは、マウスγ−インターフェロン受容体に対するcDNAのPCR増幅によって、示された。359bp断片を増幅するのに用いたプライマーはGTATGTGGAGCATAACCGGAG(配列番号:29)とCAGGTTTTGTCTCTAACGTGG(配列番号:30)であった。
【0110】
上述の結果は、酵母スフェロプラストが、シングルコピー大分子量DNA断片をESセルへ導入するための有効なビークルであることを示し、またこのような分子がマウス生殖系列を通じて安定かつ機能的に伝達されることを示す。いくつかのESクローンに対するPFGE分析及びin situ融合法によって補充されるAluプロフィルは、クローンの大多数(majority)が実質的に全てのヒトインサートを組換えなしの形で(即ち、「生殖系列コンフィギュレーション」において)含むことを強く議論(argue)し、クローンは高い率(40%)で双方のYACアームを保持する。酵母ゲノムDNAの顕著な取入れ(uptake)は、ESセルのinvitro及びinvivoでの適正な選別に害にならず、また生殖系列遺伝ないしは遺伝子発現を妨げなかった。これらの方法を用いて、我々は、ヒト以外の動物ゲノムの中へインサートとしてゲノムDNAの大きな断片を導入でき、そこで、インサートは生殖系列遺伝によって完全な形で伝達される。従って、広汎なバラエティの異種DNAがヒト以外の例えば、ホ乳動物、特に小さな実験動物などの、新しい表現型又は新しい遺伝� �型を伝達する宿主内へ導入できる。*例えば、小さな実験動物内へホ乳動物例えばヒトの遺伝子を導入し、病気の原因を研究し、多種の薬剤のヒト遺伝子への反応を研究することができる。或いは、ホ乳動物宿主内へ大きな(遺伝子)座部分 (large loci)を導入し、例えばイムノグロブリン、T-細胞受容体、主要抗体適合性複合抗原等のような蛋白質のヒト蛋白質シーケンスを得ることもできる。
【0111】
H鎖YAC A287-C10及びカッパー鎖YAC A80-CのESセル及び胚への導入
pLUTO(yA287-C10)でターゲティングした、ヒトH鎖YAC A287-C10を含む酵母をスフェロプラストにし、HPRT-欠失ESセル系E14.1TG3B1と、上述の如く、融合した。抗HAT ES(ESY)クローン(2B, 2C, 2D, 3A, 3B, 5C, 1125A, 1125E, 100/1500及び100/4000)をピックしDNA分析によって伸長させた。組換えられたYACの評価は、それらのクローンからのHindIII切断DNAのサザンブロット分析により、前述のD, JH, μ及びVH2領域に対するヒトH鎖プローブを用いて、行った。全てのESYクローンは、期待した>10kbのJH及びμ断片を含むことが認められた。2D, 5Cクローンを除き他の全てのESYクローンは、4.8kb VH2kb断片を含むことが認められた。2D, 3Bクローンを除き他の全てのESYクローンは、期待した10及び7.6kbのD遺伝子断片を含むことが認められた。酵母のゲノムシーケンスは、2B, 2D, 100/1500及び5Cクローンを除いて、他の全てのESYクローンにおいて、酵母反復Ty要素との融合により、検出された。ESYクローン2B, 3A, 5Cは、上述の如くC57B/6胎盤胞内へ微量注入され、キメラマウス(2Bクローンから10匹、3Aクローンから1匹、5Cクローンから1匹)が産生された。これらのキメラ動物10匹からの尾DNAのサザンブロット分析により、全てでないにしても大部分の酵母中のyA287-C10内で検出された明らかな10Alu断片の大部分の存在と共に、VH2及びD遺伝子断片の存在をも示した。産生されたキメラマウスは、C57BL16Jマウスとかけ合わされて、生殖系伝達評価を行った。2Bクローンから導かれたキメラ雄78K-3は、ESセルゲノムをその子孫へ、100%の率で伝えた。6匹のアグーチマウス子供(pups)の中で4匹は、尾DNAのサザンブロット分析により、ヒトH鎖シーケンスの存在を示した。
pLUTO(YA80-C7)でターゲティング処理したヒトカッパー鎖YAC A80-C7を含む酵母(E14, ITG3B1 ESセル含有)との融合実験の結果、2つの抗HAT ESYクローンM4.4.1とM5.2.1が得られた。これらのクローンからのHindIII切断DNAのサザンブロット分析により、酵母のyA80-C7に検出された全ての明らかな(apparent)10Alu断片の存在が判った。双方のクローンにも、ゲノムシーケンスは組込まれていた。ESYクローンをC57B1/65胚盤胞へ微量注入し、キメラマウスを産生した。
【0112】
実施例VII
相同組換えを用いたヒトIgの導入による、キメラマウスによるIgの生産
実施例I−VIに記したアプローチの変法として、ヒトIg遺伝子を、相同組換えを用いて、マウスのH-及びL鎖イムノグロブリン部位(loci)を直接ヒトH-及びL鎖部位によって置換(組換)することにより、マウスのIg部位へ導入する。これに続き、胚性幹細胞から導かれたセルが生殖系に寄与するキメラトランスジェニッ� ��動物の産生を行う。
【0113】
A.ヒトH鎖組換えベクターの構成
組換えヒトシーケンスは、既述の通り、ヒト-YACライブラリから分離されるヒトVHb-D-J-Cμ-Cδ H鎖領域を包含する、ゲノムDNAのSpeI100kb断片を含む。相同組換え過程を駆動するフランキングマウスH鎖シーケンスは、夫々ヒトシーケンスの3'及び5'末端に、マウスCε-Cα鎖の10kb BamHI断片と、5'J558断片とを含み、後者は、マウスH鎖可変領域のJ558断片の5'側半分を含む(図16)。これらのマウスシーケンスは、下記の方法を用いて、マウスの胚ゲノムライブラリから分離される。即ち、この方法は、Tucker et al. (1981), PNAS USA 78: P7684-7688及びBlankenstein and Krawinkel (1987, 上掲誌)に夫々記載されている。1150bpのXhoIからBamHIまでの断片(これはヘルペスシンプレックスウイルスチミジンキナーゼ遺伝子(HSV-tk)プロモーターとポリオーマインハンサーにより駆動されるネオマイシン耐性遺伝子を含む)が、pMC1Neo(Koller及びSmithies, 1989, 上掲誌)から単離される。合成アダプターをこの断片に付加し、XhoI末端をBamHI末端に変換し、結果する断片をプラスミド中にてBamHIマウスCε-Cαに統合する。
【0114】
ヒトH鎖部位を含むYACクローンから、インサート各末端からのDNAシーケンスが、逆PCR法(Silverman et al. (1989), PNAS 86: P7485-7489)から又は、E.coli内でのプラスミド救助(rescue)法(Burke et al. (1987), Garza et al. (1989), Science, 246 : P641-646; Traver et al. , 1989)によって、回収される(図8参照)。YACの5'V6末端から単離されたヒトシーケンスをマウスのJ558シーケンスにプラスミド中で統合(ligate)し、同様にして、YACの3'Cd末端から導いたヒトシーケンスをNeo及びマウスのCε-Cα(上述)を含むプラスミド中でNeo遺伝子へ結合する。ヒトV6-マウスJ558セグメントを、次いで、サブクローンして半-YACクローニングベクターとする。このベクターは、原IgH YACには存在しない酵母選択性マーカー(HIS3)セントロミア(CEN)及び単一のテロミア(TEL)を含むようにする。ヒトC8-Neo-マウスCε-Cαを、同様にしてサブクローンし、異った酵母選択性マーカー(LEU2)と単一TELを含む別の牛-YACベクターとする。ヒトNG DNAを含む牛-YACベクターを線状化し、HIS3及びLEU2染色体を削除され、かつIgH YACを有する酵母株を形質変換(transform)するのに用いる。ヒスチジン−プロトトロフィ選択により、ヒトV6 DNAシーケンスとの間で相同組換えを行い、組換えYAC(recombinant YAC)を含む酵母コロニーを得る。ヒトC8 DNAを含む牛ベクターYACは、次いで線状化され、前段でつくられた酵母株を変換するのに用いる。ロイシン−プロトトロフィ(prototrophy)選択により、完全なIgH置換YACを含む酵母株を得る(図16参照)。好ましくは、双方のターゲティング過程は、ロイシン及びヒスチジンプロトトロフィの同時選択を行う。単一変換ステップとして行う。これは、もとの中心性及び非中心性(centric, acentric)YACアームが図16に図示の場合とは、逆の配向になっている場合に特に有用である。このYACは、単離され、胚について前述の如く、微量注入によりESセル中ヘ導入される。
【0115】
実施例VIII
トランスジェニックマウスの交配
A.ヒトモノクローナル抗体を産生するマウスの創出
ヒトのイムノグロブリン部位を含むマウスを不活性化したマウスイムノグロブリンジーンを有するマウスと交配し、ヒト抗体のみを産生するマウスをつくる。4つの異種接合の株から出発し、交配を3代行い、不活性マウスカッパー及びH鎖イムノグロブリンに対してホモ接合なマウスを創出する。そのための交配チャートを図17に示す。
【0116】
実施例IX
ヒトモノクローナル抗体の製造
A.マウスの免疫
イムノグロブリン部位からの組換導入されたヒトDNAを含む生殖系列キメラマウスを、アジュバント内で抗原の注入によって免疫する。マウスは、原初免疫後抗原で14日間追加抗原刺激(ブースト)され、これを、35日後と56日後に繰り返す。交配を、免疫した動物に対して行い、抗原の免疫に対抗する血清抗体の力価(titer)をテストする。最大力価を有するマウスを殺して、脾臓を取出す。
【0117】
B.脾細胞の融合
脾細胞の融合パートナーとして用いるミエローマセルを融合に先立つ6日前、解きほぐし(thaw)、組織培養中で成長させる。融合の1日前、セルを牛胎児血清を5×105セル/mlの濃度で含む新鮮なメディウム(培養基)内へ分割(split)させる。融合する日の朝セルを、2 0%牛胎児血清と2×OPI(3mg/mlオキサロアセテート、0.1mg/mlピルベート、0.4IU/mlインシュリン)溶液で補充された、等量のメディウムで稀釈する。
マウスを殺した後、脾臓を無菌下で切除し、培地シャーレ内へ置く。セルは脾臓が微細片になるまでかき裂き、大部分のセルは除去する。セルを新しい滅菌メディウム内で洗い、凝集は沈澱させる。
脾臓細胞は、血清なしでメディウム中で遠心分離にかけてさらに2度洗う。第2回目の洗いの間に、ミエローマセルも、他の試験管中で洗う。最終洗いの後、2つのセルペレットを結合し、一度一緒に遠心分離にかける。
セルペレットのセルが再分散されている間に、PEGの50%溶液を徐々に全部で2分間で加える。予め加温した10mlのメディウムをセル溶液に3分間で徐々に撹拌しつつ加える� ��セルを遠心分離にかけ、上澄みを除く。セルを、20%牛胎児血清、1×OPI溶液及び1×AM溶液(58μMアザセリン、0.1mMヒポキサンチン)で補充した10mlのメディウム中に再分散する。融合したセルは、96ウエルのプレートに分画し、37℃で1週間培養する。
上澄みを無菌下で各ウエルから取出し、各プールに入れる。これらのプールは、免疫抗原に対する反応性をテストする。陽性のプールをさらに、各ウエル毎にテストする。陽性ウエルを確認したら、セルを96-ウエルプレートから、20%牛胎児血清、1×OPI及び1×AHで補充したメディウム0.
5mlへと移す。カルチャーが密になったらセルを5mlへと増殖し、次いでさらに10mlへと増殖する。この段階でセルを、単一の抗体を産生するセルがカルチャーの中にあるように、サブクローンする。
【0118】
上述のプロセスに従って、ヒト以外のキメラ宿主、特にマウスの宿主で、ヒト抗体又は抗原に特異的な類似物を産生するべく免疫されることが可能な、キメラ宿主をつくることができる。このようにして、トランスジェニック宿主はヒト宿主には使うことができなかった抗原で免疫できるので、ヒトモノクローナル抗体を得ることに関連する種々の問題が解消される。さらに、ヒト宿主には許容されないようなブースター注入剤及びアジュバント(抗原補強剤)を提供することも� �きる。結果するB細胞は、所望の抗体の連続的な製造のための不壊死化(immortalization)のために用いることもできる。不壊死化したセルは、イムノグロブリン又は類似体をエンコードする遺伝子の単離のために用いることができ、さらには、in-vitro突然変異誘発(mutagenesis)又は抗体の性質を修飾するその他の技術のような方法により、分子の修飾を行うこともできる。これらの修飾ジーンは次いで、不壊死化したセルへトランスフェクション(組換技術)により戻し、所望の抗体のためのホ乳動物の継続的細胞ソースを提供することができる。本発明は、その中でヒト宿主内での抗体の生産と類似の仕方で、ヒト抗体が生産される、ヒト抗体の好都合なソースを提供する。動物宿主セルは、好都合にも、ヒト抗体の生産のため、宿主細胞� �でヒトDNAの活性化と組換えを提供する。
【0119】
本発明によれば、ヒト抗原を備えた所定宿主ホ乳動物の免疫によって、ヒト抗原、例えば蛋白質に対するヒト抗体が産生できる。得られる抗血清は、ヒトイムノゲンに特異的であり、また宿主の血清から得ることができる。免疫した宿主B細胞は、例えばミエローマセル融合、トランスフェクション、等の不壊死化のために用いることができ、抗体、抗血清及びモノクローナル抗体はモノクローナル抗体を産生する例えばハイブリドーマのような不壊死性セルをつくるのに用いることができ、抗体、抗血清及びモノクローナル抗体は抗体を産生するセルの種類に応じてグリコシレート化する。抗体を産生するためIg座の稀な可変領域を探索して、稀な可変領域を有する抗体を得る ようにすることもできよう。
【0120】
本願において引照した全ての刊行文献及び特許出願は、各文献又は出願が特にかつ各別に引用により加入されたかの如く、本明細書に、引用をもって加入される(incorporated by reference)。
本発明は、理解の明解さのため、図示及び実施例を介して、ある程度詳細に記述されたが、本発明の教示に照らして、ある変更、修正を添付の請求の範囲の趣旨(スピリット)及び範囲(scope)から離脱することなくなされうることは、当業者には容易に明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】図1は、実施例Iに示す、マウスの重鎖(H鎖)J域の不活性化ベクターのダイヤグラムを示す。
【図2】図2は、実施例IIに示す、プラスミドpmHδJと標的マウスのH鎖J遺伝子のDNA制限マップのダイヤグラムを示す。
【図3−1】図3−1は、実施例IIに示す、マウス株のIgMアロタイプをステインする抗体のフローシトメトリープロットを示す。
【図3−2】図3−2は、� �施例IIに示す、マウス株のIgMアロタイプをステインする抗体のフローシトメトリープロットを示す。
【図4】図4は、実施例IIに示す、マウスストレインのIgMアロタイプをステインする抗体のフローシトメトリーヒストグラムを示す。
【図5】図5は、実施例IIIに示す、マウスのイムノグロブリンカッパー定常領域遺伝子の不活性化ベクターのダイヤグラムを示す。
【図6】図6は、実施例IIIに示す、プラスミドpK.TK/Neoの誘導の仕方のダイヤグラムを示す。
【図7】図7は、実施例IIIに示す、H鎖(L鎖)標的位置の制限マップのダイヤグラムを示す。
【図8】図8は、実施例IVに示す、カッパーL鎖J及び定常領域の不活性化のための標的ベクターと、ターゲティング実験のデザインのダイヤグラ� �を示す。
【図9−1】図9−1は、実施例IVに示す、カッパーL鎖Jを不活性化するベクターと、定常領域の構成のダイヤグラムを示す。
【図9−2】図9−2は、実施例IVに示す、カッパーL鎖Jを不活性化するベクターと、定常領域の構成のダイヤグラムを示す。
【図9−3】図9−3は、実施例IVに示す、カッパーL鎖Jを不活性化するベクターと、定常領域の構成のダイヤグラムを示す。
【図10】図10は、実施例IVに示す、カッパーL鎖J及び定常領域の不活性化のためのベクターの最終除去のダイヤグラムを示す。
【図11】図11は、実施例IVに示す、L鎖J及び定常領域除去セルのサザン分析の図式表示を示す。
【図12A−B】図12A−Eは、実施例VIに示す、ESクローン内に統合されたyHP RT及び酵母ゲノムDNAを特性付けるサザンブロット分析の結果を示す写真である(A=ヒトの反復Aluシーケンス;B,C=右(B)及び左(C)YACアームの、pBR322−特異シーケンス;D=酵母反復シーケンス;E=酵母シングルコピー遺伝子LYS2)。Alu及びTyシーケンスでプローブされたyHPRTのより短い露光時間(Iの48hrに対し、IIは12hr)も示す。分子量マーカの位置を示す。右(a)及び左(b)ベクターアームの構成及びpBR322−誘導のYACベクター断片の位置が示される。(C=テロミア;=酵母−誘導のシーケンス;O=酵母動原体;=pBR322−誘導のシーケンス;=ヒト挿入;=EcoRIクローニングサイト;H=HindIIIサイト)
【図12� ��−E】図12A−Bの続きを示す図である。
【図13】図13A−Dは、実施例VIに示す、ESセルクロモソーム内のyHPRTと酵母ゲノムシーケンスの統合を検出するためのin situ・ハイブリダイゼーションの結果を示す写真である。(A,B=メタフェーズが、ビオチニレイトされた(biotinylated)ヒトゲノムシーケンスへとハイブリダイズされたESY8−7セルから拡がる。C=メタフェーズが拡がる、又はD=ビオチニレイトされた酵母の反復DNAシーケンスへとハイブリダイズされたESY8−6セルからインターフェーズ核)
【図14A−F】図14A,B,Cは、実施例VIに示す、インビトロES分別におけるyHPRTの安定保存と、マウスの生殖系統を通じてのトランスミッションを示す。(A:a,b=胚体;及び分別したセルタイプ;c=血島、d=収縮筋、e=神経セル、f=ESYクローンにより形成された神経小管 B:a=ヒトAluプローブ;、b=酵母Tyシーケンスを用いて分別したESY5−2,3−6,8−5及び8−6(20μg)及びyHPRT in AB1380(40ng)から抽出されたDNAのサザンブロット分析 C:a=ヒトAlu及びb=Tyシーケンスを用いESYキメラセル394/95−2から誘導された2アグーチ子孫(4−2及び4−3)からの尾DNA(20μg)のサザンブロットの分析;8−6及びTyでプローブしたyHPRTの短い方の露光(12hr)を示す(II)。
【図14G−I】図14A−Fの続きを示す図である。
【図14J−K】図14G−Iの続きを示す図である。
【図15】図15A,Bは、実施例VIに示す、様々なマウス組織内における、ヒトHPRT遺伝子の発現を示す電気泳動ゲルの写真である。(15A=対照マウス又はESY4−3アグーチ子孫ES,ESY3−1及びHut78セル、脾臓、肝臓内における逆転写−PCRを用いての、ヒトHPRT mRNAの検出;15B=15AからのサンプルにおけるRT−PCRによる、マウスγ−インターフェロン受容体mRNAの検出;M=サイズマーカ)
【図16】図16は、実施例VIIに示す、ヒトイムノグロブリンH鎖位置、及びヒトH鎖置換YACベクターのダイヤグラムを示す。
【図17】図17は、実施例VIIに示す、マウス交配系統のダイヤグラムを示す。
【図18A】図18Aは、本発明の方法により産生される宿主動物の幾つかの遺伝子型を示す。
【図18B】図18Bは、本発明の方法により産生される宿主動物の幾つかの遺伝子型を示す。



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